それでも私は生きている

『それでも私は生きている』は、1971年3月10日に日本コロムビアから発売された美空ひばりのシングルです。

概要

このシングルのA面を飾る『それでも私は生きている』は、作詞家・阿久悠が美空ひばりに初めて提供した作品として知られています。当時、阿久悠は尾崎紀世彦の『また逢う日まで』でレコード大賞を受賞するなど、その才能が広く認められていましたが、この時点ではまだひばり本人とは面識がありませんでした。

阿久悠は、ひばりと同世代でありながら、彼女が天才少女歌手として一世を風靡していた時代から、その存在を強く意識し、畏敬の念を抱いていたと語っています。阿久悠は自らの作詞家としての指針である「作詞家憲法」の第一条に、「美空ひばりによって完成したと思える流行歌の本道と、違う道はないものであろうか。」と記すほど、ひばりの楽曲とは異なる方向性を模索していたそうです。この「作詞家憲法」は、阿久悠の母校である明治大学駿河台キャンパス内の「阿久悠記念館」で展示されており、彼のひばりに対する特別な思いを今に伝えています。

『それでも私は生きている』の歌詞は、2番で「だめ捨てちゃだめよ」、3番で「だめ死んじゃだめよ」と、聴く人の心に強く訴えかけるフレーズが印象的です。ジャーナリストの田勢康弘は、この曲を「人生の応援歌」と評し、晩年のひばりの歌には人生を歌ったものが多く、それはまるで自身の短い人生を予感していたかのようだと述べています。また、ひばりの歌には魂が宿っていると感じ、それを生きる糧にしたファンが多いとも語っています。

B面の『新宿波止場』は、徳光和夫が「隠れた名曲」として挙げています。2011年11月11日に東京ドームで開催された『東日本応援チャリティー美空ひばりメモリアルコンサート「だいじょうぶ、日本!」～空から見守る愛の歌～』では、徳光和夫と共に司会を務めた藤原紀香が、この曲を甥のミッツ・マングローブが歌ったことを紹介しています。

収録曲

1. それでも私は生きている
作詞：阿久悠、作曲：井上かつお、編曲：馬飼野俊一
2. 新宿波止場
作詞：横井弘、作曲・編曲：市川昭介


このシングルは、ひばりの歌声と阿久悠の魂を揺さぶる歌詞が融合した、時代を超えて愛される名作と言えるでしょう。

関連項目

* 1971年の音楽

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