たったひとつの冴えたやりかた

たったひとつの冴えたやりかた

『たったひとつの冴えたやりかた』は、著者ジェイムズ・ティプトリー・Jr.による短編SF小説で、1985年に『ファンタジイ・アンド・サイエンス・フィクション』に初めて掲載されました。この作品は、後に短編集の表題作となり、日本語訳は1987年に早川書房から出版されました。

あらすじ

物語は、16歳の少女コーティーの誕生日から始まります。彼女は両親から小型宇宙船を贈られ、秘密裏にその船を改造して宇宙の旅に出発します。コーティーは、ある星系で連邦基地に行方不明となった人々の噂を耳にし、その星系を目指します。

旅の途中で、彼女は星系からのメッセージパイプを拾います。このメッセージパイプを通じ、冷凍睡眠から目覚めたコーティーは、脳内に生命体・イーアが寄生していることに気づきます。イーアは自身をシロベーンと名乗り、コーティーとともに冒険を繰り広げます。二人は次第に意気投合しますが、イーアは寄生生物であり、コーティーの脳を食い荒らしてしまう危険性も孕んでいます。

シロベーンはこの宇宙の中で成長し、父母となる繁殖期を迎えますが、自身に十分な教育を受けることなく、コーティーを危機に陥れる事態を引き起こします。コーティーはシロベーンの胞子が熱に弱いことを知り、冷凍睡眠に入る前に、宇宙船が恒星の近くを通過し衝突するコースを設定します。彼女はこれまでの出来事をメッセージパイプに記録し、連邦基地へ送信しました。

この行動により、コーティーは自らの命を犠牲にしながらも、連邦に危機的な状況を知らせる決断を下しました。物語のクライマックスにおいて、彼女は「これがたったひとつの冴えたやりかた」と語るのです。

芸術的な評価と受賞歴

『たったひとつの冴えたやりかた』は、俊逸な発想と深いテーマ性から高く評価されています。1986年にはローカス賞ノヴェラ部門を受賞し、1989年には第19回星雲賞海外部門でも受賞しました。日本でも多くの読者に親しまれ、特にS-Fマガジン創刊700号記念ではオールタイム・ベストSF海外短編部門ベスト50にランクインしました。

この作品は、ティプトリーが持つ特有の視点と感受性を反映しており、彼女の他の作品とともに評価の高いSF文学として広く知られています。読者はコーティーの冒険を通じて、存在の意味や選択の重要性について深く考えさせられることでしょう。

書籍情報

本作はアメリカでは1986年に短編集『The Starry Rift』の一部として発表され、日本では1987年に翻訳版が早川書房から出版されました。後には改訳版も出ており、現在でも広く読まれています。表紙や挿絵などにも工夫が凝らされ、特に表紙画が印象深いと評判です。

物語の視点やテーマは、国を超えて多くの人々に共感を呼び、今なお人気の高い短編となっています。

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