たぶん最後の御挨拶

『たぶん最後の御挨拶』

『たぶん最後の御挨拶』は、日本を代表する作家、東野圭吾によるエッセイ集です。文藝春秋から2007年1月30日に出版されたこの作品は、デビュー以来の彼の心情や作家としての歩みが率直に描かれています。

このエッセイ集には、1985年に乱歩賞を受賞し、作家としての道が開かれる瞬間から描かれた数々のエピソードが収められています。受賞後、彼は作家生活のスタートを切るはずだと思っていましたが、実際には何度も賞の候補に名前が挙がりながらも、なかなか成果が出ない厳しい日々が続いていました。これらの経験が、彼にとっての緊迫感や挫折感を形成し、やがて10年の歳月を経て、ようやく『秘密』での大ブレイクへとつながります。

作家としての成功には時間がかかり、直木賞を受賞するまでにはさらに20年もの長い道のりがありました。それでも彼は、作品を書くことを続けることで、壁を押し続ければ必ず何かが動くと信じていました。タイトルにある『たぶん』という言葉には、今後も書くかどうかの迷いと共に、最後であるとは言い切れない想いが込められています。エッセイ集としての「最後の御挨拶」と名付けられているものの、それが本当に最後かどうかの確証はなく、その曖昧さが読み手に興味を引きつけます。

また、本書には彼が大切にしている飼い猫の写真が表紙に使われており、カバー装画や章扉のイラストも自ら手がけています。このような要素からも、彼の個性や人柄が垣間見えます。

さらに、彼はあとがきにおいて、自身がエッセイを書くことに対しての苦手意識を正直に語っています。エッセイの執筆が本業である小説家としての活動に支障をきたすことを考え、今後は執筆を控える意向を示している点も、読者にとっては一つの識見となるでしょう。

キャッチコピーには、「打たれ弱かったら作家になんかなってない 文学賞落選記録15回!──『押し続けていればいつか壁は動く』と信じた20年の日々」とあり、彼の努力と忍耐がいかに重要であったかを表現しています。この言葉は、ファンだけでなく、文学に興味のあるすべての人々にとって勇気づけられるメッセージとなっています。これらの点を総じて、『たぶん最後の御挨拶』は東野圭吾がどのように作家として成長し、どのような挑戦を経てきたのかを語る、非常に貴重な一冊と言えるでしょう。

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