ため息橋

ため息橋：ヴェネツィアの歴史とロマンスが交差する場所

ため息橋（Ponte dei Sospiri）は、16世紀に建設されたヴェネツィアを象徴する橋の一つです。白大理石で造られたこの橋は、その美しい外観だけでなく、歴史とロマンスが織りなす物語によって、世界中の人々を魅了しています。

橋の構造と役割

橋には覆いが施され、石造りの格子の付いた窓が特徴的です。この橋は、ドゥカーレ宮殿の尋問室と古い牢獄を結ぶ通路として機能していました。橋の内部は、囚人たちが護送される際に通る場所であり、外の景色を垣間見ることができる唯一の場所でした。

名前と由来

「ため息橋」という名前は、19世紀にジョージ・バイロンが物語詩『チャイルド・ハロルドの巡礼』の中で「Bridge of Sighs」と呼んだことに由来します。囚人たちが牢獄へ送られる前に、この橋の窓から最後のヴェネツィアの美しい景色を見てため息をついたという伝説に基づいています。しかし、実際には、橋が建設された頃には厳しい取調べや刑の執行は行われておらず、宮殿の独房も短期刑の囚人のために使用されていました。

現在の姿

今日、ため息橋はヴェネツィアの主要な観光名所の一つとなっています。ドゥカーレ宮殿の近く、海側のバリア橋（Ponte Paglia）からは、橋の全体像を美しく眺めることができます。また、一つ内陸の橋からもその姿を捉えることが可能です。牢獄は一般公開されており、ドゥカーレ宮殿からため息橋を渡って外の景色を眺めることもできます。

ロマンチックな伝説

地元の言い伝えによると、恋人同士が日没時にこの橋の下でゴンドラに乗ってキスをすると、永遠の愛が約束されると言われています。この伝説から、橋の下の水路はゴンドラでヴェネツィアを観光する際の定番コースとなっています。また、この伝説をモチーフにした映画『リトル・ロマンス』（1979）も制作されています。

他の「溜息の橋」

ヴェネツィアの「ため息橋」にちなんで、イギリスのケンブリッジとオックスフォードにも「溜息の橋」（The Bridge Of Sighs）と呼ばれる橋があります。これらの橋は、ヴェネツィアのものとは異なり、牢獄とは関連がありません。

ケンブリッジの溜息の橋: ケム川に架かる橋で、学業に苦しむ学生たちがため息をついたという噂があります。橋は一般には立ち入り禁止となっています。
オックスフォードの溜息の橋: ニューカレッジ・レーンという通りにかかっており、ハートフォード・カレッジの二つの建物を繋いでいます。

ため息橋は、ヴェネツィアの歴史、文化、そしてロマンスを象徴する場所として、多くの人々を魅了し続けています。

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