たろう観光ホテル

たろう観光ホテル

岩手県宮古市田老地区に位置する「たろう観光ホテル」は、かつてホテルとして営業していましたが、2011年3月11日に発生した東日本大震災による津波で甚大な被害を受けました。この建物は、震災の恐ろしさを後世に伝えるための震災遺構として保存されています。

震災前のホテル

ホテルは1986年に建設された6階建ての建物でした。しかし、震災による津波は1階から3階を飲み込み、1階と2階部分はフロアが抜け落ち、鉄骨がむき出しになるほどの被害を受けました。4階以上は比較的被害が少なく、当時の状態を保っています。

震災遺構としての保存

震災後、多くの被災建造物が解体される中で、宮古市は震災の記憶を風化させないため、このホテルを震災遺構として残すことを決定しました。保存費用は国からの支援を受け、復興庁は国費による支援の要件を満たすとして、ホテルの保存に必要な工事費2億1000万円を負担しました。これは、震災遺構の保存に国費が投入された初のケースとなりました。

2014年3月には宮古市がホテル側から土地を買い取り、建物の無償譲渡を受けました。その後、丹青社による整備を経て、2016年4月1日から震災遺構として一般公開が開始されました。

見学について

内部の見学は、宮古観光文化交流協会が実施する有料ガイドツアー「学ぶ防災」に参加することで可能です。このツアーでは、津波が襲来した際にホテルから撮影された貴重な映像も視聴できます。また、見学者の安全を確保するため、立ち入り可能なエリアは浸水していない上層階部分に限定されており、下層階部分は基礎とみなされています。当初は非常階段のみが通路でしたが、2020年にはエレベーターが設置され、高齢者や体の不自由な方も見学できるようになりました。

維持管理の課題

保存費用は国費で賄われたものの、年間約1000万円の維持管理費用は宮古市の負担となっています。市は、ふるさと納税や寄付金で資金を積み立てていますが、2025年度にはコンクリートの補修や防錆工事などで多額の費用が必要となる見込みです。

ホテルのその後

ホテルの事業者は、震災後、近くの高台に「渚亭 たろう庵」という名前で新築移転し、2015年4月から営業を再開しています。

外部リンク

岩手県宮古市 たろう観光ホテル
学ぶ防災ガイド（ガイドツアー概要・申込みページ）
* 渚亭 たろう庵


たろう観光ホテルは、震災の恐ろしさを後世に伝える貴重な震災遺構であり、防災意識を高めるための重要な場所となっています。

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