チンコロ

チンコロ

チンコロは、新潟県と三重県菰野町という離れた地域でそれぞれに息づく、ユニークな郷土菓子です。どちらも「チンコロ」という同じ名前を持ちながら、その製法や意味合いは大きく異なっています。

新潟県のチンコロ

新潟県におけるチンコロは、主に県全域で1920年頃から伝わるとされています。うるち米を粉にした「シンコ（新粉）」を蒸して練り上げ、食紅で着色したものを使い、狆（ちん）の子犬を模した愛らしい形をはじめ、様々な小動物や干支をかたどります。一つ一つが手作りで作られるため、その数は限られています。

乾燥するとひび割れが生じやすいのですが、そのひびの数が多いほど幸福が訪れるという言い伝えもあります。十日町市では、年始の伝統行事である「節季市」で魔除けの縁起物として販売され、かつては囲炉裏で焼いて食されていましたが、近年では飾るのが一般的です。

節季市

雪深い農閑期の副業として、十日町市の諏訪町通りで毎年1月の特定の日に開催される市です。生活雑貨や民芸品が並び、かつては多くの農家が藁細工や木工品、竹細工などを持ち寄っていました。現在では十日町のみがこの市を続けており、工業製品も増えましたが、竹かごや富士笠、そしてチンコロといった伝統的な品々も健在です。節季市では、チンコロの他に、柔らかいシンコに餡を詰めた「トットッコ」という食用のお菓子も販売されています。

チンコロの作り方

新潟県のチンコロ作りは、各農家が代々受け継いできた秘伝の技法ですが、その起源は定かではありません。多くは明治から昭和初期に遡ることができるようです。具体的な作り方は各家庭によって異なりますが、大まかな流れは以下の通りです。

1. うるち米を粉に砕いたものを蒸して練り上げる。
2. 白の他、食紅などで赤、黄、緑など色を付ける。
3. 棒状にした生地にハサミで切り込みを入れ、耳や手足を作る。
4. ハチマキや首輪、鞠などの飾りを作る。
5. すべてを組み合わせて台紙に乗せる。
6. 数時間寝かせる。
7. 再び数分間蒸して艶を出す。
8. 飾りの金粉を付ける。
9. 冷ます。

チンコロの種類

チンコロには様々な種類があります。

イヌマリ - 鞠で遊ぶ子犬
タワラネズミ - 俵と鼠
モチツキウサギ - 臼で餅をつく兎
ハナ - 鉢植えの花と草
ネコニタイ - 鯛を捕まえた猫
ユキダルマ - 蓑をまとった雪だるま
干支 - その年の干支
ヘビ - 金神さまの化身

技能の継承

チンコロの製作は、かつては家族単位で細々と行われていました。しかし、後継者不足などから、地域で保存会を結成し、講習会を開いて技術を伝承する取り組みが行われています。チンコロの製作場所も、農家から公民館や授産施設へと移り変わってきています。

三重県菰野町のチンコロ

一方、三重県菰野町のチンコロは、一口サイズの仔犬を型どった木型に、もち米粉と砂糖などを混ぜて固め、中に餡子を詰めた落雁です。戦国時代、織田信長の孫娘である八重姫が菰野藩へ嫁いだ際、子犬のおもちゃを嫁入り道具として持参したことが由来とされています。かつては町内の多くの和菓子店で販売されていましたが、2023年時点では2店舗のみとなっています。地元では「ちんころさん」と呼ばれ、親しまれています。

このように、同じ名前を持ちながらも、新潟県と三重県菰野町では全く異なる姿を持つチンコロ。それぞれの地域で独自の歴史と文化を育み、人々に愛され続けています。

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