つきせぬ想い

1993年香港映画『つきせぬ想い』：切ないラブストーリーと金像奨受賞の輝き

1993年公開の香港映画『つきせぬ想い』（原題：新不了情）は、1961年のショウ・ブラザース作品『不了情』をヒントに制作されたラブストーリーです。前作が誤解から別れを告げられた女性の悲恋を描いたのに対し、『つきせぬ想い』では、不治の病を患う若い女性と売れない作曲家の、儚くも美しい恋物語が展開されます。この設定は、伊・日合作映画『ラストコンサート』とも共通点が見られます。

主演を務めるのは、アニタ・ユン。普段は活発でいたずら好きな役柄が多い彼女ですが、本作では可憐で繊細な女性を演じ、その魅力的な演技で観客を惹きつけました。

映画は、香港電影金像奨において最優秀作品賞、監督賞、主演女優賞（アニタ・ユン）、助演男優賞（チョン・プイ）、助演女優賞（フォン・ボーボー）、脚本賞と、主要6部門を独占するという快挙を成し遂げました。これは、作品の高い評価と人気を如実に示しています。

ストーリー：運命に翻弄される二人の恋

主人公のキットは、作曲家でありサックス奏者。恋人で歌手のトレイシーと同棲していましたが、トレイシーが売れっ子歌手になる一方、自分の音楽が商業主義に染まっていくことに嫌悪感を覚え、関係に終止符を打ちます。

下町の唐楼（旧式の低層アパートメント）に引っ越したキットは、階下に住む20歳のミンと出会います。ミンは粤曲（広東オペラの歌部分）を8歳から学び、明るい性格と天真爛漫な姿でキットの心を捉えていきます。キットはミンの歌声をレコード会社に紹介し、彼女の歌手デビューを後押しします。

しかし、ミンの母は二人の交際に反対し、ミンの歌手デビューもキットの言い訳に過ぎないと疑っています。キットはミンの母と話し合い、ミンのことを心から愛していることを伝え、理解を得ようとします。

ミンの誕生日の日、キットは粤劇団のメンバーやミンの叔父のジャズ仲間と共にアドリブセッションを行い、その場で彼らと融合することで、ミンの家族にも受け入れられます。

こうして二人は恋人となりますが、幸せな日々は長く続きません。ミンが幼い頃から患っていた骨肉腫が、10年間の寛解期間を経て再発してしまうのです。

映画の成功とその後

『つきせぬ想い』の大ヒットを受け、制作会社であるUFO電影人電影公司は、台湾のロックレコード（滾石唱片）と協力し、アニタ・ユンとカリーナ・ラウを再び共演させる音楽映画を企画。レスリー・チャンも出演を快諾し、『君さえいれば/金枝玉葉|君さえいれば_金枝玉葉』が誕生しました。この作品も大ヒットとなり、『つきせぬ想い』は香港映画史における重要な作品として位置づけられています。

スタッフとキャスト

監督・脚本：イー・トンシン
製作：チャン・モンワー
撮影：タン・チーワイ
音楽：クリス・バビダ（鮑比達）
美術：ユー・チュンマン

キャスト
アニタ・ユン：ミン
ラウ・チンワン：キット
カリーナ・ラウ：トレイシー
その他多数

主題歌

「新不了情」（作詞：黄鬱、作曲：鮑比達、歌：萬芳）

関連作品

日本映画『タイヨウのうた』は、本作をリメイクした作品として知られています。

『つきせぬ想い』は、美しい音楽と切ないストーリー、そして優れた演技によって、多くの観客の心を掴んだ名作です。香港映画史に燦然と輝く、忘れがたい一作と言えるでしょう。

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