つばき、時跳び

つばき、時跳び

梶尾真治による小説『つばき、時跳び』は、時間旅行をテーマにした恋愛物語です。元々は平凡社のPR誌『月刊百科』で「つばきは百椿庵に」というタイトルで連載され、2006年に単行本として刊行される際に改題されました。

あらすじ

物語は、主人公である歴史小説家の井納惇が、亡くなった祖父の屋敷「百椿庵」に住むところから始まります。そこは、女性の幽霊が出ると噂される場所でした。ある日、惇はその幽霊を目撃し、彼女の美しさに魅了されます。屋敷を調べていくうちに、彼は屋根裏に奇妙な仕掛けがあるのを発見します。

その夜、幽霊とそっくりな古風な女性が現れました。彼女は「つばき」と名乗り、幕末の時代からタイムスリップしてきたと言うのです。惇は、屋敷の仕掛けがタイムマシンであり、それによってつばきが現代にやってきたのだと推測します。現代の技術に戸惑うつばきを、惇は献身的に看病し、二人は次第に惹かれ合います。しかし、数日後、つばきは突然姿を消してしまいます。惇は再びつばきに会うため、タイムトラベルの方法を探し始めます。

登場人物

井納 惇（いのう じゅん）: 歴史小説家。30代の独身男性。つばきに惹かれる。
柳井 つばき（やない つばき）: 幕末の時代に生きていた女性。17歳か18歳。古風な考え方を持つが、新しいものを受け入れる柔軟さも持つ。
仰烏帽子 寿（のけぼし ひさし）: タイムマシンの開発者であり、最初のタイムトラベラー。
福薗 玄馬亮（ふくぞの げんばのすけ）: 長岡の配下。つばきとは知り合い。
長岡 監物（ながおか けんもつ）: 細川家城代家老。つばきに、りょじんさんを百椿庵に滞在させるよう依頼する。
松本 喜三郎: 実在した人形師。つばきを生き人形のモデルにしたいと申し出る。

メディア展開

『つばき、時跳び』は、小説以外にも様々な形で展開されています。

舞台: 2010年に明治座で舞台化。成井豊が脚本・演出を担当し、福田沙紀がつばき役を演じました。
ラジオドラマ: 2017年にNHK-FM「青春アドベンチャー」でラジオドラマ化。美山加恋がつばき役を演じました。

また、映画化の企画もありましたが、監督の交代などがあり、制作準備が進められています。

こぼれ話

作者の梶尾真治が実際に住んでいる屋敷が、物語の舞台である「百椿庵」のモデルになっています。また、物語のエピソードは、映画『マイ・フェア・レディ』や『ローマの休日』などから影響を受けているそうです。梶尾がイメージするつばきはオードリー・ヘプバーンとのことです。

『つばき、時跳び』は、タイムトラベルというSF的な要素と、時代を超えた切ない恋愛模様が魅力的な作品です。熊本の美しい風景を背景に、過去と現代の価値観の違いや、人の心の温かさを描いています。

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