とらかぷっ!

『とらかぷっ！』は、2002年に株式会社ウィルのゲームブランド「PULLTOP」からリリースされた、成人向け恋愛アドベンチャーゲームにシミュレーションゲームの要素を組み合わせた作品です。2003年には、WellMadeよりPlayStation 2向けに『とらかぷっ! だーっしゅ!!』として移植版が発売され、2006年には廉価版も登場しました。

タイトルの『とらかぷっ』は、「トラブルキャプチャー」を略した言葉であると同時に、メインヒロインである桜姫が得意とする噛みつき攻撃の名称でもあります。

ゲームシステム

本作は、物語を読み進めるアドベンチャーゲーム形式と、戦略性が求められるシミュレーションゲーム形式が融合しています。

シミュレーションパートの主な目的は、「湯玉」と呼ばれる精霊をできるだけ多く放出し、「色珠」を湯玉に変えて土地を広げていくことです。一日に放出できる湯玉の数には限りがあり、プレイヤーは「散薬」や「温泉」の効能を利用して湯玉を放出可能な数を増やしていきます。他チームとの色珠の交換も可能で、チーム間の友好度によって交換レートが変動する仕組みです。

物語は特定の条件を満たすことで進行するイベントが多数用意されており、ゲーム開始から9日目（8月4日）までのプレイヤーの行動によって、各キャラクターの個別ルートへと分岐します。特に獣ノ神・桜姫のルートでは、8月15日までに最も多くの「黒玉」を獲得し、1位にならなければ強制的にゲームオーバーとなってしまう厳しい条件が存在します。

あらすじ

物語の舞台は、古くから温泉地として名高い地方都市、四方山町（よもやまちょう）です。この町では、60年に一度「四方山大大祭」（よもやまだいたいさい）という盛大な祭りが開催されます。この祭りは、町にある三つの神社が合同で行うだけでなく、そこに祀られている三柱の神々が協力して、「黒」と呼ばれる災いを密かに退治するための重要な儀式「黒払い」を兼ねています。

7月のある日、主人公の上坂優太は、両親より一足先に東京から四方山町へ引っ越してきます。両親が来るまでの間、祖母（故人）の家で一人暮らしを始めることになったその夜、祭りに参加する獣ノ神・桜姫が「黒玉怪獣」を追って、入浴中の優太の元になだれ込みます。桜姫は、優太を祭りに参加する神の従者、通称「獲り手」に一方的に指名し、「シモベ」と呼びつけます。辞退しようとする優太に対し、桜姫は「魅了方術」で従わせようと試みますが、三度失敗した挙句、自分自身が術にかかってしまい、優太にファーストキスと神通力の一部を与えてしまいます。こうして優太は、半ば強引に桜姫を家に迎え入れ、彼女の「獲り手」として「黒払い」に参加することになるのでした。

主な登場人物

上坂 優太（かみさか ゆうた）：物語の主人公。温厚で少し頼りない性格ですが、獲り手として祭りに参加する中で成長していきます。幼少期の記憶を失っています。
桜姫（おうき）：メインヒロインの一人。獣ノ神。高飛車でわがままな一面もありますが、一族に強い誇りを持ち、どこかドジなツンデレ少女。怒ると優太に噛みつきます。個別ルートでは、行方不明の母親を探す目的も明かされます。
荻嶋 歌夜（おぎしま かよ）：メインヒロインの一人。鳥ノ神・御翼の獲り手。眼鏡をかけたお嬢様ですが、ボケといたずらに情熱を燃やすトラブルメーカー。幼少期に主人公と面識があります。
御翼（みつば）：鳥ノ神。食いしん坊で純真な性格。桜姫とは喧嘩友達。背中には鳥の羽根を出し入れできます。
日乃宮 夏葉（ひのみや なつは）：メインヒロインの一人。竜ノ神・静波の獲り手。歌夜の友人であり、ツッコミ役。幼い頃に主人公と会っており、心臓に持病を抱えています。
静波（しずな）：竜ノ神。夏葉のパートナー。普段はおとなしいですが、思い込みが激しく、キレると手が付けられなくなります。前回の大大祭で優勝した経験があります。
ブライアント：優太が飼っているニワトリ。見かけによらず強く、神通力が回復した桜姫をも負かすほど。元は歌夜が飼っていました。
妃咲（きさき）：桜姫の母親。60年前の大大祭で負傷し、特殊な呪いをかけて生きながらえています。黒覆面として優太たちの前に現れることもあります。
大きな神：四方山を実質的に支配する神。かつて四方山を破壊したとされる黒ノ巨人の正体とされますが、真相は異なります。

世界観と用語

四方山町：物語の主な舞台となる温泉地。三つの山と川で区切られ、各地区で異なる神を崇めています。
大大祭（だいたいさい）：60年に一度開催される、神々が人間界を訪れる特別な祭り。裏では「黒払い」が行われます。
黒払い：四方山に湧く「黒」と呼ばれる災いを、三神とその獲り手が退治する儀式。期間は約1ヶ月、時間帯も限られており、黒玉の捕獲数を競います。
黒玉・湯玉：「黒玉」は「黒」が「湯玉」を取り込んだ姿で、多数集まると「黒玉怪獣」になります。「湯玉」は四方山に住む地霊で、神々の使い魔でもあります。
黒ノ巨人：かつて四方山を壊滅させた存在。三神を激しく敵視しています。

開発経緯と反響

本作の企画とシナリオは椎原旬氏と下原正氏が担当し、原画はたけやまさみ氏が手がけました。開発初期から「お祭り」「神様」「チーム」といった要素が定まっており、神様がパートナーと共に戦う設定が作られました。「単なる戦いではなく競い合う」という考えから、神々が欲しがるお宝として温泉が設定され、舞台が温泉地となりました。また、祭りの雰囲気を表現し、キャラクターの性質をパラメータや行動で示すためにシミュレーションパートが導入されました。

開発においては「楽しいゲーム」を目指し、特にバッドエンドを意図的に排除したことが特徴です。これは、バッドエンドフラグが立っている状態でゲームを進めさせ、最終的に不幸になるような体験をプレイヤーにさせたくないというディレクターの意向によるものです。

キャラクター設定は、まず神々であるヒロインを作り、その後パートナーを設定するという順序で行われました。当初、桜姫は気高いお姫様として設定されていましたが、最終的には庶民的でドジなツンデレキャラクターへと変更されました。御翼は賑やかし担当、歌夜は設定が重すぎたため、より面白さを追求したトラブルメーカーへと方向転換されました。静波と夏葉はデザインが比較的初期案通りでしたが、物語展開は型破りなものとなりました。

発売前は静波の人気が高かったものの、発売後は桜姫に人気が集まる結果となりました。一方、御翼についてはユーザーから様々な指摘があり、開発側もユーザーに理解されるかわいさを表現すべきだったと振り返っています。

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