ねずみとり (アガサ・クリスティ)

ねずみとり (The Mousetrap)

『ねずみとり』とは、イギリスの推理小説作家アガサ・クリスティによる名作戯曲である。1952年にロンドンのウェスト・エンドで初演を迎え、その後2020年のCOVID-19流行まで続いた公演は、世界最長の連続上演記録を保持している。この作品は、もともと王太后メアリー・オブ・テックの80歳の誕生日を祝うラジオドラマとして1947年にBBCが依頼した「三匹の盲目のねずみ」を基にしている。その後、クリスティは1950年に短編小説を、1951年には戯曲としても発表した。なお、戯曲のタイトルは同名の作品が存在したため改めて『ねずみとり』と名付けられた。これはクリスティの娘婿による提案で、シェイクスピアの『ハムレット』に関連する。

この戯曲では、イギリスの有名な童謡「三匹の盲目のねずみ」が重要な役割を果たす。作中には登場人物がこのメロディを口ずさむシーンがあり、観客にとっても印象的な演出となっている。『ねずみとり』は初演から長い間続くロングラン劇として名を馳せ、2000年には上演回数が20,000回を超えた。作品は推理劇としての性質を持ち、観客には物語の結末を忘れず守るようお願いしている。さらに、役者や演出家を定期的に交替させることで、新鮮さを保っている。

リピーターも多く、初めて観劇した観客の多くが自らの子供を連れて再度観に来るという現象も見られる。この作品は、2012年11月22日に60周年を迎えたのを契機に、ロンドン以外でもツアー版の公演が行われるようになった。日本でも2013年3月6日より『マウストラップ』の名で六本木ブルーシアターで特別公演が開始された。

あらすじ

物語は、若い夫婦のモリーとジャイルズが経営するゲストハウス・マンクスウェル山荘を舞台に繰り広げられる。彼らは一年前に結婚したばかりで、ゲストハウスをオープンした初日、天気予報ではロンドンでの殺人事件が報道され、同時に大雪に関する情報も流れてくる。大雪の中、予約客が次々と到着し、追加で車がスリップした男性が急遽泊まることになる。

翌日、孤立した山荘に警察から連絡があり、ロンドンでの殺人事件を捜査するため、トロッター刑事が訪れる。殺人犯が童謡の楽譜を使って次の犯行を予告していることがわかる。物語は緊迫した雰囲気の中、宿泊客の一人が殺される事件に発展する。

登場人物

• - モリー・ロールストン： ゲストハウスの女将。美しさと快活さを兼ね備えた若い女性。
• - ジャイルズ・ロールストン： モリーの夫。やや傲慢な性格。
• - クリストファ・レン： 上宿の若い男性建築家。
• - ボイル夫人： 大柄で不機嫌な年配女性。
• - メトカーフ少佐： きびきびした動きを見せる中年男性。
• - ミス・ケースウェル： 若い女性で、低い声が特徴。
• - パラビチーニ氏： 急遽宿泊する外国人男性。
• - トロッター刑事： 明るく普通の若い男性。

構成

本作はマンクスウェル山荘の居間を舞台に、2幕に分かれている。第1幕では宿泊客の到着と事件の発端が描かれ、第2幕では事態の進展が展開される。クリスティの巧妙なトリックと緊張感溢れる演出が、観客を引き込み続けるのだ。

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