のれんす号

のれんす号とは

「のれんす号」（正式名称「デマンドたいない のれんす号」または「デマンドタクシー のれんす号」とも呼ばれる）は、新潟県胎内市が提供する予約制のデマンド交通システムです。これはあらかじめ決められた路線や時刻表がなく、利用者の予約に応じて最適な経路で運行されるドアtoドア方式を採用しており、「エリア型」に分類されます。市内全域に近い広範囲をカバーすることで、地域住民や訪問者の移動手段として重要な役割を果たしています。

概要

主にワゴン車が用いられるこのデマンド交通は、胎内市域を便宜上、以下の4つのエリアに分割して運行されています。

中条築地エリア
乙エリア
黒川エリア
中心市街地エリア

運行パターンは、各エリア内での移動、または各エリアと中心市街地間の移動が基本となります。運行間隔は概ね1時間ごとに設定されています。利用者は、指定されたエリア内の自宅や目的地など、希望する場所で乗り降りが可能です。実際の運行経路は、その時点の予約状況に基づいて効率的に決定されます。特例として、市外にある新潟県立坂町病院やJR坂町駅といった施設も利用可能な範囲に含まれており、近隣市町との連携も図られています。

利用方法と運賃

のれんす号を利用するには、初めての際に事前登録が必要です。この登録は胎内市民に限定されず、市外在住者でも行うことができます。そのため、観光やビジネスで胎内市を訪れる人も気軽に利用することが可能です。実際、市内の観光施設でも訪問手段の一つとして案内されています。

運賃は1回あたり300円の定額制です（小児は半額の150円）。距離に関わらず一律料金であるため、安心して利用できます。また、頻繁に利用する方向けに、利便性を考慮した回数券や定期券も購入可能です。

沿革と地域交通再編

のれんす号の導入は、地域の公共交通のあり方を見直す動きの中で実現しました。その端緒となったのは、2007年に採択された内閣府の全国都市再生モデル調査「公共交通システムと交通拠点整備による都市再生とコンパクトシティへの誘導調査」の結果です。これを受け、2008年には胎内市地域公共交通総合連携計画が策定され、具体的な運行計画が練られました。そして、NTT東日本のシステムを活用し、中条町商工会が運営主体となって、2009年（平成21年）4月に運行が開始されました。

運行開始後、利用状況に応じて増便が図られ、地域のニーズに応えていきました。特に重要な転換点として、2013年（平成25年）4月からは土日祝日も運行されるようになり、平日以外の移動手段としても定着しました。

のれんす号の導入は、胎内市内の公共交通網の再編と密接に関わっています。導入以前の2007年時点では、市内では主に7系統の路線バス（いわゆる4条バス）に加え、曜日限定運行のコミュニティバスや福祉バスが利用されていました。しかし、2009年4月ののれんす号運行開始と同時に公共交通網は大幅に見直され、コミュニティバスは廃止されました。その後もデマンド交通への移行は段階的に進み、2017年9月末に最後まで残っていた中条～築地～新発田線が廃止されたことにより、胎内市内から路線バスは完全に姿を消しました。これに伴い、市内に存在した新潟交通観光バスの中条営業所も閉鎖されています。このように、のれんす号は単に新たな交通手段として加わっただけでなく、既存の公共交通体系を置き換える形で、市内の主要な移動手段としての地位を確立していきました。

利用状況

近年の利用状況として、2018年度には年間約5.6万人がのれんす号を利用しており、市民の生活に深く浸透していることが分かります。2017年10月に実施された利用実態調査によると、最も利用頻度の高い乗降場所は、中条中央病院や県立坂町病院といった医療機関でした。これは、高齢者など、通院のために公共交通を必要とする人々にとって重要な移動手段となっていることを示唆しています。これに続き、福祉施設、スーパーマーケットでの買い物、鉄道駅へのアクセス、温泉施設への移動などが多く利用されており、日常生活における多様な目的に応じた利用がなされていることがうかがえます。のれんす号は、路線バスが廃止された後、地域住民の生活を支える不可欠な交通インフラとしての役割を担っています。

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