ひこうき雲 (荒井由実の曲)

ひこうき雲

「ひこうき雲」は、日本のシンガーソングライター松任谷由実（旧名：荒井由実）が1973年に発表した楽曲です。最初は彼女の2枚目のシングルのB面曲としてリリースされ、その後同年のアルバム『ひこうき雲』の表題曲となりました。この曲は、彼女の小学校時代の友人で筋ジストロフィーを患っていた少年の死を念頭に置いて制作されたものです。友人との別れから4年後、彼の葬式で知らない高校生の姿を見たときに受けた衝撃が、歌詞に色濃く反映されています。

この曲は、荒井由実がプロの歌手としてスタートするきっかけとなった作品でもあります。実際には、当初は別のシンガーである雪村いづみに向けて書かれ、レコーディングも行われたものの、様々な理由でリリースには至りませんでした。そのため、最終的に荒井が自ら歌唱した形で世に出ることとなりました。雪村も後にこの曲を好み、自身のライブで何度も演奏していたため、その未発表音源が1990年に彼女のアルバム『COME ON BACK』に収録され初めて公表されました。

更に、彼女の楽曲に対する評価は世代を超えて受け入れられています。彼女の元夫である松任谷正隆は、曲中の意外なコード使いに驚き、それが結婚の決め手になったと冗談交じりに語るほどです。また、音楽家である團伊玖磨は、この曲の中で「ひこうき雲」という歌詞のイントネーションの違いに感心したとのことで、意外な視点からもその魅力が評価されています。

1989年には別ミックスのCDシングルやアルバムも発売されましたが、現在はその入手は難しくなっています。さらに、2013年にはスタジオジブリの映画『風立ちぬ』の主題歌としても大きく注目されることになりました。この映画への使用については、スタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫が松任谷のベストアルバムの収録曲を聴いて以来、宮崎駿監督の意向が反映されたことによります。映画とこの楽曲の相性は抜群で、松任谷にとっても嬉しいサプライズとなったとのことです。

また、同年に配信限定シングルとして再リリースされ、映画の公開に伴い、レコチョクのシングルデイリーランキングやiTunesのトップソングで1位を獲得するという快挙も果たしています。2015年にはなんと50万ダウンロードを達成しました。このリリースは、映画の主人公がチューを交わすシーンをデジタルジャケットに描いたりした点でも話題となりました。

さらに、2016年にこの楽曲をモチーフにしたテレビドラマが放送され、懐かしい昭和の雰囲気を色濃く反映したストーリー展開が視聴者の心を掴みました。こうして「ひこうき雲」は、今なお多くの人々に愛され続ける作品としてその地位を確立しています。今後もぜひ、この楽曲に耳を傾けてみてください。

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