ひめゆりの塔事件

ひめゆりの塔事件

ひめゆりの塔事件は、1975年7月17日に沖縄県糸満市で発生したテロ事件です。これは、日本の新左翼系過激派によるもので、当時の皇太子明仁親王と同妃美智子をターゲットにしたものでした。この事件は、同日の白銀病院事件と共に知られています。

概要

この事件では、新左翼党派のメンバーによる攻撃がありましたが、皇太子夫妻やその関係者には幸運にも大きな怪我がありませんでした。白銀病院に潜入した沖縄解放同盟準備会という過激派メンバー2名が、病院から皇太子が乗った車両に対して、ガラス瓶やスパナ、石を投げつけて破損させました。一方、ひめゆりの塔では、洞窟に潜伏していたメンバーが皇太子の足元に向けて火炎瓶を投擲し、献花台を炎上させる事件が発生しました。

事件背景

沖縄復帰後に開催された沖縄国際海洋博覧会に向けて、皇太子夫婦が沖縄を訪問することが決定しました。これは戦後初の皇族による沖縄訪問であり、戦争の悲劇を忘れないための献花が目的でした。しかし、沖縄解放同盟準備会は「皇太子上陸阻止」を訴え、段階的に抗議活動を展開していました。

沖縄解放同盟準備会は、「日本軍の残虐行為を許さない」とし、皇太子とその代理人である昭和天皇への強い反感を表明していました。結果として、沖解同（準）は皇太子夫妻を狙うテロ計画を決定し、実行に移しました。

警備体制

皇太子夫妻の到着前、沖縄県警察は約3,700人の警察官を動員して警備体制を敷いていましたが、県民の「過剰警備」批判を懸念した政府側は、最初の計画から大幅に人員を減らしました。沖縄県知事は楽観的な見解を示し、警備の前倒し確認を求めた警察庁の助言が無視されたことで、警視庁の警備も簡素化されました。

事件の発生

事件は昼頃に発生しました。白銀病院事件では、入院患者に扮した活動家らが皇太子の車両に向けて攻撃を行い、現行犯で逮捕されました。その後、ひめゆりの壕に隠れていた共犯者たちが、皇太子夫妻の訪問中に火炎瓶を投げるという事件が起こります。幸運なことに、皇太子と同妃には大きな怪我がなかったものの、皇太子妃は打撲を受けました。この際、警察は指揮を失い、一時的に逃げ出す無様な事態を招きました。

事件後の影響

事件後、裁判が行われ、白銀病院事件の犯人は懲役1年6ヶ月、ひめゆりの壕事件の犯人には懲役2年6ヶ月の実刑が言い渡されました。また、皇太子から警備関係者への処罰を行わないよう要請があったにもかかわらず、警察関係者には処分が行われました。

この事件は、その後の皇族の沖縄訪問において賛否を巻き起こしました。昭和天皇は病気のため訪問を果たせず、皇太子明仁親王が摩文仁の丘での献花に際し、戦争の悲劇を悔いる気持ちを表したことが記録されています。また、事件発生の約2年後、北海道で行われた沖縄国体では多くの警備が敷かれ、皇族の訪問には再び緊張が走りました。

その他の影響

事件の実行犯である知念は、後に政治の場に姿を現し、社会党の推薦を受けて名護市議会議員に当選しました。事件当時報道に携わっていた地元紙の記者は、後にその時の警備の甘さを批判され、マスコミ界でも議論を呼びました。

ひめゆりの塔事件は、沖縄と皇族、また戦争責任を巡る問題を現出させ、日本の歴史の中で特異な位置を占めています。

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