ふたりの距離の概算

『ふたりの距離の概算』

概要

『ふたりの距離の概算』は、米澤穂信が著した推理小説で、2010年に角川書店から発行されました。本作は「古典部」シリーズの第5弾とも位置付けられています。物語は、2011年版の「本格ミステリ・ベスト10」で第11位に選出されるなど、評価の高い作品です。

この小説は『野性時代』の2009年11月号から2010年4月号まで連載され、2010年6月に単行本としてまとめられました。また、2012年には文庫版も登場し、その裏面にはアニメ「氷菓」の表紙が使用されたリバーシブルカバー仕様として発売されています。ストーリーは、著者がマイクル・Z・リューインの作品やスティーヴン・キングの小説からインスピレーションを受けて構想されたもので、登場人物たちの日常と謎解きが絡み合った内容が特徴です。

物語は古典部のメンバーが高校2年生になった後の出来事を描いています。特に5月末に行われるマラソン大会を中心に、彼らの回想として構成されています。

あらすじ

神山高校で開催される20キロメートルのマラソン大会、通称「星ヶ谷杯」に臨む古典部の新たな冒険が始まります。物語は、搬入部員の大日向友子が入部を辞退する事件からスタートします。この事件は、奉太郎がせっかく迎えた古典部の新生活に影を落とす出来事でした。彼の記憶の中には、大日向と部室でのやり取りがあり、彼女が残した言葉が気掛かりになります。

第1章では、新入生を勧誘する際の奉太郎とえるの様子が描かれ、製菓研究会の謎を追うことで物語が展開します。続いて、第2章では奉太郎の誕生日会が開かれ、自らの家庭や友人たちとの関わりについての考察がなされます。この場面では、心の中に秘められた真実や友人たちとの絆の在り方が浮き彫りになります。

第3章では、大日向の従兄が開く喫茶店での出来事を通じ、彼女の過去に触れます。さらに、物語は大日向の心の中に潜む悩みや葛藤を掘り下げていきます。第4章では、奉太郎が大日向の心境を理解し、互いの思いを寄せ合う瞬間が描かれ、次第に彼女の抱える問題に迫ります。

結末に至る第5章では、奉太郎が大日向との対話を経て、彼女の「友達」が形作る心理的な距離に気づく瞬間が描かれます。大日向の内面の葛藤を解きほぐすことができなかった奉太郎は、結果的に彼女の心を傷つけることとなり、古典部への入部を果たせなかった大日向との距離を改めて考えさせられます。

登場人物

• - 折木 奉太郎: 省エネをモットーにする高校2年生で古典部員。
• - 千反田 える: 好奇心旺盛な令嬢で、奉太郎の友人。
• - 福部 里志: 豊富な知識を持つ奉太郎の親友。
• - 伊原 摩耶花: 正義感の強い古典部員。奉太郎の幼馴染。
• - 大日向 友子: 活発な1年生で、古典部の新入生候補。

この作品は、友情やコミュニケーションの難しさをテーマに、主に高校生活の中での思春期の悩みや成長を描いています。アクティブなキャラクターたちの絡みを通じて、多様な人間関係が展開されていく様子は、読者に深く印象を残すことでしょう。

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