へんてこなオペラ

『へんてこなオペラ』：傲慢なオペラ歌手といたずら好きの手品師のドタバタ劇

『へんてこなオペラ』(原題:Magical Maestro)は、アメリカ合衆国のアニメーター、テックス・アヴェリーによる傑作アニメーション作品です。1952年に公開され、そのユーモラスな展開と予測不能なギャグの数々で、長年にわたって多くの観客を魅了し続けています。

物語の中心は、傲慢な人気オペラ歌手スパイク（プッチーニ）と、いたずら好きの手品師ミストーの二人です。コンサートを控えたスパイクは、リハーサルの最中にミストーから魔術の棒を売り込まれますが、彼の申し出を拒絶し、追い払ってしまいます。

ミストーは、スパイクの高慢な態度に激怒し、仕返しを決意します。コンサート本番の会場に潜入したミストーは、魔法の棒を使って指揮者の衣装やカツラ、さらには鼻まで奪い取り、指揮者に扮します。

そして、オペラの舞台で、スパイクが『セビリアの理髪師』の「町の何でも屋」を歌い出すと、ミストーは魔法の棒でスパイクの衣装にウサギや植木鉢を次々と出現させ始めます。スパイクは慌てふためきながら歌い続けようとしますが、ミストーのいたずらはやみません。

スパイクは、バレリーナ、テニスプレーヤー、囚人、アメリカンフットボール選手、中国人、カントリーミュージックの歌手など、次々と奇妙な姿に変えられてしまいます。観客席からは、スパイクの醜態に激怒した男性が、果物やインクなどを投げつけるというハプニングも発生し、ミストーのいたずらはさらにエスカレートしていきます。果物を頭に受けたスパイクは、なんとカルメン・ミランダのような姿に変えられ、歌って踊り出す始末です。

しかし、調子に乗りすぎたミストーは、遂にスパイクに正体を見破られてしまいます。怒り狂ったスパイクは魔法の棒を奪い取り、今度はミストーに魔法をかけ、舞台に引きずり出します。そして、ミストーに歌を歌わせ、スパイク自身が経験したような奇抜な変身を次々とさせて復讐します。

最後は、舞台から降りてきた「THE END」の緞帳にミストーが押しつぶされ、物語は幕を閉じます。

この作品には、傲慢なスパイク、いたずら好きなミストー以外にも、オペラの主催者と思われる観客席の男性、ミストーの魔法で出現するウサギ二匹、そして、魔法で姿を変えられてしまう指揮者など、個性豊かなキャラクターが登場します。

また、アニメーション作品ならではの演出も見どころです。画面の左下に現れる毛のようなものは、最初はフィルムの汚れかと思わせる演出ですが、実はスパイクが抜いて捨てる毛であり、意表を突いたギャグとして機能しています。

『へんてこなオペラ』は、そのユーモラスなストーリーとテンポの良い展開、そして予測不能なギャグの数々によって、世代を超えて愛される名作アニメーションとして、現在も高い評価を得ています。アメリカ国立フィルム登録簿にも選ばれていることからも、その価値の高さがうかがえます。 かつては『TEX AVERY'S SCREWBALL CLASSICS』というタイトルで他のテックス・アヴェリー作品と共に収録されていましたが、現在は廃盤となっています。

この作品は、日本のTBS版『トムとジェリー』の放映枠でも時折放送され、日本の視聴者にも親しまれてきました。また、Cartoon Networkのアイキャッチにも一部が使用されるなど、現在もその影響力を残しています。 スパイクが歌う「町の何でも屋」は、歌手カルロス・ラミレスが担当したと伝えられています。そして、「プッチーニ」という名前は、イタリアの作曲家ジャコモ・プッチーニのもじりであると言われています。

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