みんなの森 ぎふメディアコスモス

みんなの森 ぎふメディアコスモスとは

「みんなの森 ぎふメディアコスモス」は、岐阜県岐阜市に位置する多機能複合施設です。2015年7月18日に開館し、岐阜市立中央図書館を主要な施設として、市民の活動や交流を促進する機能を併せ持っています。この施設は、かつての岐阜大学医学部・附属病院の跡地における市街地再開発事業の一環として整備されました。JR岐阜駅や名鉄岐阜駅から北へ約2キロメートル、岐阜城を望む金華山の麓という、市の中心部に近い立地にあります。

建設の背景と経緯

開館から半世紀以上が経過していた旧岐阜市立図書館本館は、施設の老朽化に加え、エレベーターがないなどのバリアフリーの問題、専用駐車場の不足、利用しにくい開館時間、手狭な閲覧スペースといった多くの課題を抱えていました。一方、市内に新設された分館は、その利便性の高さから旧本館を大きく上回る利用者数と貸出実績を上げ、新施設の必要性を明確に示しました。旧本館は全国の同規模自治体の図書館と比較しても、延床面積や蔵書数の面で著しく低い状況にありました。

市はこれらの課題に対応し、中心市街地の活性化を図るため、「つかさのまち夢プロジェクト」を計画。その第一期事業として新図書館の建設が位置づけられました。施設の設計者を選定するプロポーザルには全国から応募があり、国際的な評価も高い建築家、伊東豊雄氏の設計案が採用されました。

建設は、当初の想定を上回る難航を経験しました。特殊な構造に関する耐火認定の取得遅れや、複雑な木造屋根の施工に伴う入札の不成立などにより、開館時期は当初計画から度々延期されました。また、事業費も当初見込みの100億円から125億円へと膨らみ、巨額の公費投入については一部で議論も巻き起こりました。しかし、最終的には2015年に無事開館に至りました。施設の名称は全国公募で「メディアコスモス」に決定し、後に「みんなの森」という冠が加えられました。

特徴的な建築

建物の構造は、鉄筋コンクリート、鉄骨、木造を組み合わせた混構造です。延床面積は約1.5万平方メートルに及び、地下1階、地上2階建ての広大な空間が広がります。特に注目されるのは、金華山の稜線を思わせる、波打つような木造の大屋根です。幅約90メートル、奥行き約80メートルにおよぶこの屋根は、岐阜県産のヒノキ材を複雑に組み上げて造られており、最大4メートルの高低差を持つ13のマウンド（丘状の突起）が特徴的なうねりを生み出しています。このような大規模な木造のうねり屋根は世界的にも珍しく、その施工には高度な技術と綿密な計算が必要とされました。

建物の環境性能にも配慮がなされています。近くを流れる長良川の伏流水を利用した輻射式冷暖房システムや、地下水、太陽光、太陽熱などの自然エネルギーを活用することで、同規模の建物と比較してエネルギー消費量を大幅に削減しています。

2階の図書館空間の天井からは、直径8メートルから14メートルまでの大小さまざまな布製天蓋（グローブ）が吊り下がっています。この半透明のグローブは、柔らかな自然光を空間に取り込む採光装置であると同時に、中央部の開口部から自然換気を促す役割も果たしています。また、各グローブには異なる透かし模様が施され、空間に多様な表情を与えています。

耐火建築物として、書架はグローブを中心に配置され、延焼を防ぐためのコンクリート製の背板や床板が採用されています。また、建物全体で防火・不燃加工が施された素材が用いられています。

一方で、開館後には屋根からの雨漏りや、屋根内部の鋼材の錆びなどが確認され、施設の一部に建築上の課題も発生しています。

屋外空間と施設全体

敷地内のランドスケープデザインも特徴的です。南側には、幅30メートル、長さ240メートルにわたる遊歩道「せせらぎの並木 テニテオ」が整備され、多様な樹木が植えられています。遊歩道には小川や小径も設けられ、憩いの場となっています。また、広大な前庭「みんなの広場 カオカオ」は、イベント開催にも適した開放的な空間です。

施設全体としては、岐阜市立中央図書館のほか、市民活動交流センターや多目的ホールなどを備え、多様な用途に対応します。運営には年間最低7億円程度の費用が見込まれています。施設内には、コンビニエンスストアやコーヒーチェーン店（スターバックス）も出店しており、公立図書館としては珍しいスターバックスの直営店出店として話題になりました。また、中小企業の経営課題を支援する「よろず支援拠点」が設置され、司書が同席して情報提供を行うなど、図書館との連携を図ったユニークなサービスも提供されています。

市民活動と図書館の特色

1階部分は、市民の多様な活動や交流のためのスペースが中心です。最大230席の「みんなのホール」ではコンサートや講演会などが開催され、ギャラリーでは美術展などが開かれています。市民活動を支援する交流センターや、国際交流・多文化共生を推進する交流プラザ、有料貸出のスタジオなども設けられています。

岐阜市立中央図書館は、旧館から大幅に規模が拡大しました。延床面積は約4.7倍、蔵書可能冊数は約4.5倍、座席数は約7倍となり、蔵書数20万冊から最終的に90万冊を目指しています。専門書が多い県立図書館に対し、メディアコスモスの中央図書館は一般書の充実に重点を置いています。開館時間の延長や、市内の分館・図書室とのネットワーク化による他館返却サービスなど、利用者の利便性向上も図られました。

図書館内部は、壁を極力排除した開放的なワンルーム空間となっており、従来の図書館のイメージを覆します。2階の開架閲覧エリアは約30万冊、1階のガラス張り書庫は約60万冊を収容可能です。2階は子どもの学習をサポートする「チャイルドグローブ」、読み聞かせなどができる「親子グローブ」、郷土資料を閲覧できる「リサーチグローブ」など、11のテーマ別エリアに分かれています。畳敷きのスペースや、金華山を眺めながら読書できるテラスなど、多様なくつろぎ空間が提供されています。

中央図書館は「滞在型図書館」をコンセプトに掲げ、乳幼児から高齢者まで幅広い世代、特に若い世代の利用促進に力を入れています。開放的な空間ゆえにある程度の騒音は容認されており、利用者の約6割は女性です。

司書が手作りした本の紹介POPの掲示や、「子ども司書講座」、地域団体との連携事業など、市民参加を促すユニークな取り組みも行われています。中高生専用エリアや、市民が本を持ち寄って棚を育てる「まちライブラリー」の常設など、新たな試みが多数導入されています。

開館後の反響と評価

開館初日から多くの来館者で賑わい、その後の利用状況は旧館時代から飛躍的に増加しました。開館から数ヶ月で貸出冊数や利用者数は数倍に伸び、特に若い世代の利用が顕著になりました。全国からの視察も相次ぎ、新たな図書館・複合施設のモデルとして注目を集めました。

メディアコスモスは、市民投票で「2015年の岐阜市政十大ニュース」第1位に選ばれるなど、地域住民に歓迎されています。建築やデザイン面でも高く評価され、JAGDA賞や照明学会による照明デザイン賞最優秀賞など、国内外で多数の賞を受賞しています。開館から約1年で年間入場者数100万人を達成するなど、名実ともに岐阜市の新たなランドマークとなっています。

基礎情報

延床面積: 約15,300m²（うち図書館は約9,400m²）
開館時間: 施設全体 9:00～21:00、図書館 9:00～20:00
休館日: 毎月最終火曜日、年末年始
アクセス: JR・名鉄岐阜駅から徒歩またはバス利用

様々なバス系統でアクセス可能。

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