むしり取られて追い出され

《むしり取られて追い出され》

フランシスコ・デ・ゴヤ（Francisco de Goya）によって1797年から1799年にかけて制作された銅版画《むしり取られて追い出され》（西: Ya van desplumados, 英: There they go plucked）は、版画集《ロス・カプリーチョス》の一部として知られています。《ロス・カプリーチョス》は、計80点の作品からなるゴヤの代表的な版画集の一つであり、1799年に発表されましたが、その辛辣な内容から販売はわずか27部のみに留まり、直後に販売中止となる運命をたどります。

作品の概要

《むしり取られて追い出され》は、男女の欺瞞と売春をテーマにした作品群のなかでも特に注目される一枚で、売春に関する寓意を強く表現しています。この版画は、前後の作品と一緒に連なり、明確な物語を形成している点が特徴です。具体的には、第19番の「みんなひっかかるだろう」と第21番の「何という羽のむしり方」と共に、男性たちが売春婦に騙され、惨めな末路を辿る様子を描いています。

画面には、一匹の売春婦が、無惨な状態にある男たちを箒で追い出す様子が描かれています。男たちは羽根をむしり取られ、頭髪も奪われて恐怖に満ちた表情を浮かべています。彼らは必死になって逃げ出そうとしますが、既にその身体は痩せ細り、内臓までもがさらけ出されるほどに傷ついています。周囲には他の女性たちもいて、彼らを一層追い立てようとしています。この情景は、売春によって引き起こされる悲惨な結果を強調しており、単に売春の行為そのものを描写すること以上の深い意味を持っています。

コンテクストと解釈

ゴヤはこの作品を通じて、金銭によって権力を持つ女性が、男たちをどのように扱うのかを風刺しています。売春婦たちは、報酬を受け取った後、彼らに対する態度が一変し、時に暴力的になる様子が見え隠れします。ゴヤの手稿には「すでに羽をむしられたなら、立ち去れ。他の奴らがやって来る。みんな罠にひっかかるだろう」との内容が記され、愚か者たちがどれだけ簡単に罠にはまるかを示唆しています。

また、作品には二人の老人が登場します。一方は修道士のように見え、もう一方は遣り手婆のようにも解釈され、そこにあるロザリオはその象徴として描かれています。このロザリオは、男性聖職者を示すものではなく、むしろセレスティーナのような女性を暗示しています。

来歴と保存状況

この作品に関連する準備素描は、プラド美術館に所蔵されており、ゴヤの息子フランシスコ・ハビエル・ゴヤ・イ・バエウに由来しています。彼の息子、マリアーノ・デ・ゴヤに相続された後、1861年にバレンティン・カルデレラによって収集されました。1886年、王命によってプラド美術館に購入され、現在に至ります。

定義し直す

本作品は、単なる視覚芸術の枠を超えて、社会の深い部分を鋭く分析する批判的メッセージを伝えています。ゴヤは、自身の時代を映し出す鏡として、売春とその結果を描くことで、社会を考察する機会を提供しているのです。

もう一度検索