めし

映画『めし』の概要

『めし』は、林芙美子による長編小説を原作とした、1951年に公開された日本映画です。監督は成瀬巳喜男が務め、主演には原節子が起用されています。この作品は、昭和26年の大阪を背景に、倦怠期を迎えた夫婦の苦悩を描き、彼らの関係の変化や思索を通じて、普遍的な人間ドラマが展開されます。

原作の背景

原作は1951年に『朝日新聞』で連載され、林芙美子にとっては未完の絶筆となりました。連載中に作家が急逝したため、物語は途中で終了し、その分は映画化の際に成瀬と脚本家たちによって補完されました。映画が制作されるにあたって、会社からの要望で物語の結末は独自に改変され、夫婦の再生が描かれました。これは、元の小説とは異なる方向性を持っています。

物語のあらすじ

物語は、岡本初之輔と三千代という夫婦を中心に展開します。結婚して5年を経た二人は、外見的には美男美女の幸福な家庭と見なされていますが、実際には次第に倦怠期に突入しています。初之輔は姪の里子を招き入れるが、三千代は日々の家事に疲れ切り、彼女の存在に不安を抱きます。里子との関係に苛立ちを覚えた三千代は、里子の帰京を促し、久しぶりに実家に戻ることにします。この里帰りの間、彼女は自分の人生に疑問を覚え、自立を考え始めるものの、頭の中は様々な思いでいっぱいになります。しかし、その中で夫の初之輔が彼女を訪ねてくることで、物語は大きな展開を迎えます。

登場人物

• - 岡本初之輔：上原謙が演じる夫。
• - 岡本三千代：原節子が演じる妻。
• - 岡本里子：島崎雪子が演じる初之輔の姪。

映画化の経緯と影響

映画『めし』の制作過程では、監督の成瀬自身がスランプに苦しんでいた時期でしたが、この作品の完成が彼にとって大きな転機となりました。『めし』は公開後に高い評価を受け、興行的にも成功を収め、成瀬の復活を印象付けることに成功しました。また、作品は数々の受賞歴を誇り、特に原節子の演技が際立って評価されました。彼女は当時一連の小津安二郎作品に出演しており、原作では市井の普通の女性像を見事に演じ、新たな境地を切り開きました。

受賞歴

• - 第25回キネマ旬報ベスト・テン 第2位
• - 第6回毎日映画コンクール 日本映画大賞など、多数の受賞歴があります。

大阪の名所と文化

この映画の中では、復興期の大阪の名所が多く登場し、当時の街の風景や生活が描かれています。大阪を舞台にしたストーリーは、観光案内としての楽しみ方も加わり、人々に親しみやすい作品となっています。

『めし』は、林芙美子の精緻な描写を持ちつつ、成瀬監督による軽妙な表現によって、一般家庭の現実的な問題に親しみを感じることができる高質なドラマとして歴史に名を刻んでいます。

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