もうひとりいる

もうひとりいる

『もうひとりいる』は、2002年12月7日に劇場公開された日本のホラー映画作品です。古くから語り継がれる都市伝説『ドッペルゲンガー』をモチーフとしつつ、その設定を独自にアレンジした恐怖を描き出しています。特に注目すべきは、『呪怨』シリーズの監督として知られる清水崇が監修を務め、本作が柴田一成の記念すべき初監督作品であるという点です。

解説

本作の核となるのは、自分自身の姿形をした「もう一人の存在」が現れるというドッペルゲンガーの伝説です。しかしその設定は独自のものであり、一般的な「姿を見ると死に至る」という伝承とは異なり、「もう一人の自分自身が現実の存在を抹殺しに現れる」という、より直接的で暴力的な恐怖を描いています。このアレンジされた設定が、物語に新たな緊迫感を与えています。

出演者は最小限に絞られ、物語の舞台も都内にある人里離れた廃校一つに限定されている点も本作の特色です。これにより、閉鎖された空間での心理的な圧迫感と、逃げ場のない状況における極限の恐怖を際立たせています。主要キャストだけでなく、登場人物全体の数が少ないことで、それぞれのキャラクターに焦点を当てやすい構成となっています。

作品のプロモーションに使用されたキャッチコピーも、その恐怖の本質を端的に表しています。VHS版では「たすけて!私が殺しにくる…」、DVDコンプリート盤では「ドッペルゲンガーが自分を殺しにやって来る」と、いずれも「自分自身が殺意を持って迫ってくる」という根源的な恐ろしさを強調しています。また、パッケージなどに使われている歪んだ顔のイメージは、モデルの大國千緒奈が表現したものです。

あらすじ

物語は、売出し中の新人アイドル三人組、瑞貴、摩耶、有香が、都心の片隅にある廃校でのグラビア撮影に臨む場面から始まります。ヘアメイク担当の倉橋に見守られ、カメラマンの山崎が黙々とシャッターを切る中、マネージャーの井坂は雑誌編集者の滝本に懸命に取り入っています。撮影は順調に進み休憩を挟んだ後、一同は異変に気づきます。同行していたマネージャーの井坂の姿が見えなくなってしまったのです。

そんな折、カメラマンの山崎の後ろに、消えたはずの井坂と瓜二つの存在がいることに瑞貴が気づきます。不審に思った彼女は、その場にいた雑誌編集者・滝本から、自分と同じ姿をした分身が現れるというドッペルゲンガーの都市伝説について聞かされます。当初、山崎らは瑞貴の話を真剣に受け止めませんでしたが、その不吉な噂は現実のものとなります。程なくして井坂は、全身が異常に捩じ曲がった凄惨な死体となって発見されます。

一同は警察に通報しようとしますが、突如滝本が彼らの携帯電話をすべて取り上げ、教室に閉じ込めてしまいます。実は滝本は密かに麻薬を使用しており、山崎らが警察に通報することで自身の行為が発覚することを恐れたのです。廃校からの脱出を図る瑞貴たちでしたが、閉鎖された空間で次々と恐ろしい出来事が起こり始めます。廃校にいる人々のドッペルゲンガーが姿を現し、最初にヘアメイクの倉橋が、続いて編集者の滝本がその犠牲となって命を落とします。

逃げ場のない恐怖に追い詰められる中、ついに瑞貴、摩耶、有香のアイドルたちのドッペルゲンガーまでもが出現し、本物の自分たちを殺そうと迫ってきます。自分自身の姿をした絶対的な恐怖から、彼女たちは無事逃れることができるのでしょうか、それとも…。

キャスト

上野瑞貴：佐久間信子
島崎摩耶：世那
北条有香：河辺千恵子
山崎浩平：榊英雄
倉橋晶子：稲田千花
井坂洋樹：津田寛治
滝本康則：諏訪太朗

スタッフ

監督・脚本：柴田一成
監修：清水崇
プロデューサー：山口幸彦
ライン・プロデューサー：鈴木浩介
撮影：早坂伸
照明：原春男
美術：橋本優
VFX・音楽：坂本サク
ビジュアル・モデル：大國千緒奈

作品情報

上演時間：61分
配給：東京テアトル、キングレコード

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