もうひとりのドクター

もうひとりのドクター：クリスマスのロンドンを襲うサイバーマンの脅威

『ドクター・フー』シリーズの中でも高い人気を誇るスペシャルエピソード「もうひとりのドクター」。2008年、クリスマスの夜に放送され、1310万人を超える視聴者数を記録しました。このエピソードは、第4シリーズと第5シリーズの間に位置づけられ、クリスマスの番組視聴率で2位を獲得するほど話題を呼びました。

1851年のロンドン：記憶喪失のドクターとサイバーマンの陰謀

舞台は1851年のクリスマスイブのロンドン。10代目ドクター（デヴィッド・テナント）は、自身をドクターだと名乗るものの記憶を失っている謎の男、ジャクソン・レイク（デヴィッド・モリシー）と出会います。ジャクソンは普通のソニック・ドライバーを所持しており、ドクターとは異なる存在であることを示唆しています。

一方、ロンドンでは殺人事件や子供の失踪事件が多発。その裏には、サイバーマンを操るハーティガン嬢（ダーヴラ・カーワン）の恐るべき計画が隠されていました。彼女は巨大なサイバーマン、サイバーキングの復活を企てており、ドクターとジャクソンは、彼女の陰謀を阻止しようと奮闘します。

もう一人のドクターの正体とサイバーキングの野望

ジャクソン・レイクの正体、そして、彼とドクターが協力してサイバーキングの野望を阻止できるのか？スリリングな展開がクリスマスの夜を彩ります。このエピソードは、標準画質映像カメラで撮影された最後の『ドクター・フー』エピソードという点でも注目に値します。

サイバーマンの復活と過去のエピソードとの繋がり

このエピソードでは、過去シリーズに登場したサイバーマンが再登場します。第2シリーズでサイバス工業で製造され、「永遠の別れ」でボイド空間に閉じ込められていたサイバーマンたちが、第4シリーズでダーレク艦隊がボイド空間を消滅させたことにより、ダーレクの技術を一部吸収した状態で解放されたのです。

また、後の第5シリーズ「肉体と石」では、11代目ドクターがサイバーキングを思い出し、その存在が歴史から消されていた理由が明らかになります。さらに、ニール・ゲイマンによると、本作でドクターによって別の時空間に送られたサイバーマンが、最終的に惑星モンダスのサイバーマンと遭遇し、技術が融合することで後のシリーズに登場する様々なサイバーマンを生み出したと言われています。

製作秘話：脚本、キャスト、そしてデザイン

脚本家のラッセル・T・デイヴィスは、当初注目を集めるゲスト出演者を考えていましたが、最終的にはデヴィッド・モリシーを起用し、記憶喪失のドクターという魅力的なキャラクターを作り上げました。

キャストには、ドクターのコンパニオンであるロジータ役のヴェリレ・チャバララも出演。デイヴィスはロジータを「ドクター二人よりも賢い」と評しています。また、ハーティガン嬢役のダーヴラ・カーワンは、デイヴィスによって「これまでにないほどダークな悪役」として描かれました。

サイバーマンのデザインも注目点です。既存のデザインを改修する案もありましたが、デイヴィスの新たなデザイン案が採用され、角ばってずんぐりした、独特のサイバーシェードが誕生しました。

放送と評価、そしてホームメディア

本放送では高い視聴率を獲得し、Appreciation Indexでも高い評価を得ました。その後、オーストラリア、カナダ、アメリカ、そして日本ではHuluでの配信を経て、世界中で多くのファンを魅了しました。

DVDとブルーレイでは、放送版とは異なるエンドクレジットや特典映像が収録され、多くのファンに愛される作品となりました。標準画質で撮影されたにもかかわらず、後にBBC One HDで放送されるなど、その人気は衰えることを知りません。

「もうひとりのドクター」は、記憶喪失のドクターという斬新な設定、サイバーマンの復活、そして1851年のロンドンという舞台設定が見事に融合した、まさに『ドクター・フー』を代表する名作の一つと言えるでしょう。

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