もう一度だけふり向いて

桜田淳子「もう一度だけふり向いて」

日本の歌手、桜田淳子が1976年12月にリリースした通算17作目にあたるシングル盤が「もう一度だけふり向いて」です。この作品は、当時のアイドル歌謡曲、さらには日本のポップスシーンの一端を担うものとして世に送り出されました。

収録曲詳細

このシングルには、表題曲「もう一度だけふり向いて」と、そのカップリング曲として「招待席」の二曲が収められています。両曲ともに、時代を代表する作詞家である阿久悠が詞を手掛けています。

「もう一度だけふり向いて」（A面）

作詞: 阿久悠
作曲: 穂口雄右
編曲: 高田弘
演奏時間: 2分56秒

表題曲である「もう一度だけふり向いて」は、阿久悠による切ない情景描写が光る詞に、穂口雄右によるメロディラインが情感豊かに寄り添い、高田弘が繊細かつドラマティックな編曲を施した楽曲です。当時の歌謡曲における実力派クリエイターたちが集結した布陣は、楽曲に深みと聴きごたえを与えています。別れ際の複雑な感情や、振り返る一瞬の心の揺れを描いた詞の世界観を、桜田淳子の歌唱が表現しています。

穂口雄右は、この時期のアイドル歌謡曲やポップスにおいて数多くのヒット曲を生み出しており、叙情的でありながらもキャッチーなメロディ作りを得意としていました。また、高田弘による編曲は、ストリングスなどを効果的に使用し、楽曲の持つ叙情性を一層引き立てるスタイルが多く見られます。この楽曲においても、そうした彼らの個性が発揮されていると言えるでしょう。

「招待席」（B面）

作詞: 阿久悠
作曲・編曲: 水谷公生
* 演奏時間: 3分3秒

シングル盤のB面に収録された「招待席」も、阿久悠が作詞を手掛けています。作曲と編曲は、ギタリストとしても活躍し、作曲家、編曲家としても幅広いジャンルを手掛けていた水谷公生が担当しました。A面とは異なるクリエイターによる楽曲提供は、シングル全体として多様な音楽性を提示しようとする当時の制作姿勢を反映しています。

水谷公生による作曲・編曲は、「もう一度だけふり向いて」の抒情的な雰囲気とは趣を変え、より軽やかであったり、あるいは都会的なサウンドアプローチがなされている可能性があります（具体的な曲調については情報源に記載がありませんが、一般的な傾向として）。阿久悠の詞も、A面とは異なる視点やテーマが描かれていることが考えられます。

リリース当時の背景と後世への影響

このシングルがリリースされた1976年末は、日本の歌謡界が多様化し、アイドルから実力派歌手まで様々なアーティストが活躍していた時期です。桜田淳子自身も、デビューから数年が経過し、アイドルとしての人気を確立しつつ、歌手としての表現力も円熟期に向かいつつありました。このシングルは、そんな彼女のキャリアにおける重要な一点と言えます。

「もう一度だけふり向いて」は、リリース翌年の「1977年の音楽」シーンにおいて存在感を示した楽曲の一つであり、当時のファンにとっては馴染み深い一曲となりました。また、時を経てリリースされたベストアルバムなどにも収録されており、例えば『GOLDEN☆BEST 桜田淳子』といった企画盤を通じて、後追いのファンや現在のリスナーもこの楽曲に触れる機会を得ています。これは、本楽曲が桜田淳子の音楽遺産の一部として、長く価値を保っていることを示唆しています。

シングル盤というメディアが主流であった時代において、A面とB面の両方に質の高い楽曲を収録することは、アーティストや制作側のこだわりを示すものでした。この「もう一度だけふり向いて」シングルも、阿久悠という共通の作詞家のもと、異なる作曲家・編曲家がそれぞれの個性を発揮し、単なるヒット曲だけでなく、カップリング曲を含めたトータルな作品としてリスナーに届けられました。それは、当時の日本のポピュラー音楽が持っていた層の厚さや、楽曲制作にかける情熱を物語っていると言えるでしょう。

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