もしお許し願えれば女について話しましょう

エットーレ・スコラのデビュー作にしてイタリア式コメディの金字塔『もしお許し願えれば女について話しましょう』

1964年、エットーレ・スコラ監督によって世に送り出された『もしお許し願えれば女について話しましょう』（原題：Se permettete parliamo di donne）は、イタリア映画史に燦然と輝く一作です。スコラ監督にとって初の長編映画である本作は、同監督の代表作として広く知られており、「イタリア式コメディ」というジャンルを代表する傑作と評価されています。

豪華スタッフとキャストが織りなす、女性像への多様な視点

本作は、既に多くの脚本を手掛けていたスコラ監督と、ベテラン脚本家ルッジェーロ・マッカリの共同脚本によって生み出されました。撮影監督には、当時まだ駆け出しだったサンドロ・デヴァ、音楽はヴィットリオ・デ・シーカ監督作品でも知られるアルマンド・トロヴァヨーリが担当するなど、才能溢れるスタッフ陣が集結しています。

キャストは、まさに豪華絢爛。主演のヴィットリオ・ガスマンは、本作以前から数々の作品で活躍しており、スコラ監督作品への出演は本作が初めてではありませんでした。シルヴァ・コシナ、エレオノラ・ロッシ＝ドラゴ、アントネラ・ルアルディ、ジョヴァンナ・ラリ、ジャンヌ・ヴァレリーといった、イタリア映画界を彩った錚々たる女優陣が脇を固め、それぞれの個性を放つ魅力的なキャラクターを演じています。これらの女優たちは、それぞれがイタリア映画界で重要な役割を果たしただけでなく、国際的な作品にも出演するなど、高い知名度を誇っていました。

9つのショートコントで構成されるオムニバス形式

本作は、9つのショートコントで構成されたオムニバス形式の作品です。それぞれのエピソードは、ユーモラスでありながらも、女性の多様な姿、そして男性と女性の複雑な関係を鋭く、時に痛烈に描き出しています。ヴィットリオ・ガスマンが様々な役柄を演じ分け、それぞれのエピソードに絶妙な変化を加えています。

例えば、「案ずれば損をする」というエピソードでは、留守番をしていた妻が、夫を助けるために自らを犠牲にするという、皮肉が効いた展開が描かれています。「おもて笑顔でうちしかめっ面」では、外では愛される人気者である男が、家庭では厳しい父親として振る舞うという、男性の二重性をユーモラスに表現しています。「よその女房を寝取るよろこび」や「結婚式風景」といったエピソードでは、男女間の駆け引きや、結婚という制度に対する皮肉が込められています。「じらしにじらす結果は」や「高級パン助と無賃乗車」は、男女間の関係における駆け引きや、人間の欲求を軽妙なタッチで描いており、「ミイラとり」や「女のはらいもの」、「知らぬは亭主ばかりなり」は、人間の愚かさや、愛と裏切りといった普遍的なテーマを、コミカルに表現しています。

これらのエピソードは、それぞれ独立した物語でありながら、全体として女性の複雑な感情や行動、男性との関係性を多角的に描き出しています。

イタリア式コメディの真髄

『もしお許し願えれば女について話しましょう』は、単なるコメディ映画ではありません。社会風刺や人間の業をユーモラスに描き出すことで、観客に深く考えさせる要素も持ち合わせています。スコラ監督は、この作品で「イタリア式コメディ」というジャンルの特徴を的確に捉え、その真髄を見事に表現しました。軽妙なユーモアと、鋭い社会風刺、そして豪華なキャスト陣の演技が三位一体となって、本作を不朽の名作に押し上げているのです。

本作は、イタリア映画の黄金時代を代表する作品であり、今日観ても色褪せることのない魅力に溢れています。そのユーモアと深い洞察は、現代の観客にとっても新鮮な驚きを与えてくれるでしょう。

もう一度検索