もろさわようこ

もろさわようこ：激動の時代を生きた女性史研究家

もろさわようこ（1925年2月13日 - 2024年2月29日）は、日本の女性史研究における重要な人物の一人です。本名は兩澤葉子。長野県佐久市生まれ。幼少期は生家の没落により女中奉公をしながらも、旧制専門学校入学者検定に合格するなど、強い意志と学習意欲を持っていました。

戦時中は陸軍士官学校生徒隊本部で勤務。戦後は北信毎日新聞記者、鐘紡丸子高等文化学院教員を経て、1949年に上京。1946年には、初めて選挙権を行使し、社会参加への意識の高さを示しました。

上京後は、日本婦人有権者同盟本部事務局に入り、『婦人有権者』や『月刊婦人展望』の編集に携わります。この経験が、彼女を女性史研究の道へと導きました。市川房枝ら女性運動の指導者と関わりを持ち、女性解放運動に積極的に参加しました。庶民の視点を取り入れた近代女性史研究で多くの著作を発表し、高い評価を得ました。1969年には『信濃のおんな』で毎日出版文化賞を受賞しています。

彼女の活動は女性史研究にとどまりませんでした。部落解放運動にも関与した彼女は、1972年、長野県での全国婦人集会で部落解放同盟を批判する発言を行い、同同盟から締め出されるという出来事がありました。この出来事は、当時の社会状況と、彼女自身の強い信念を反映しています。

1982年には、佐久市に「歴史を拓くはじめの家」（のちの「志縁の苑」）を開設。晩年は神奈川県川崎市で過ごし、2024年2月29日、間質性肺炎のため99歳で亡くなりました。

もろさわようこの研究と活動

もろさわようこの研究は、常に庶民の視点に立脚していました。特に近代女性の生活や意識、社会における地位向上のための運動について深く掘り下げています。彼女の著作は、多くの読者に感銘を与え、女性史研究の発展に大きく貢献しました。代表的な著作として、『おんなの歴史 愛のすがたと家庭のかたち』、『信濃のおんな』、『おんなの歴史』、『おんなの戦後史』などがあります。

これらの著作は、単なる歴史記述にとどまらず、女性の生き方や社会における役割について鋭い洞察を示しています。また、時代背景や社会構造との関連性も丁寧に分析され、現代社会への示唆も豊富です。

さらに、彼女は自身の経験や出会いを元に、沖縄や部落問題にも取り組んでいます。特に、女性という立場から見た差別や抑圧を鋭く批判し、解放運動に積極的に関わっていました。

もろさわようこの思想と影響

もろさわようこの思想は、常に女性の解放と社会正義を追求するものでした。貧困や差別、抑圧の中で生きる女性たちの声を拾い上げ、歴史の中に埋もれていた事実を明らかにしようとしていました。

彼女の活動は、後の女性史研究者や女性運動家たちに大きな影響を与えました。特に、庶民の視点を取り入れた女性史研究という新たな視点を提示したことは高く評価されています。

もろさわようこは、激動の時代を生き抜き、女性史研究という分野で大きな足跡を残しました。彼女の著作や活動は、現代においても多くの示唆を与え続けていると言えるでしょう。

参考文献

『長野県人名鑑』信濃毎日新聞社、1974年
古川貞雄 編『郷土歴史人物事典〈長野〉』第一法規、1978年2月15日
河原千春 編著『志縁のおんな　もろさわようことわたしたち』一葉社、2021年
もろさわようこほか 著、源啓美、河原千春 編『沖縄ともろさわようこ　女性解放の原点を求めて』不二出版、2023年
* その他、多数の著書、論文、インタビュー記事等

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