やきそばできました。

北海道を舞台にしたカップ焼きそば戦争：日清食品「やきそばできました。」の軌跡

日清食品のカップ焼きそば「やきそばできました。」は、2003年3月10日、北海道限定で発売された商品です。略称は「やきでき」。その誕生は、北海道のカップ焼きそば市場における熾烈な競争が背景にあります。

当時、北海道のカップ焼きそば市場では、日清食品の「日清焼そばU.F.O.」が大きなシェアを占めていましたが、「やきそば弁当」や「焼そばバゴォーン」といった地域に根付いた商品にシェアを奪われる状況が続いていました。

日清食品は、この状況に対抗するため、まず「日清焼そばU.F.O.」に北海道・東北限定で中華スープを付ける試みを行いました。しかし、さらなる対抗策として、北海道支店の主導で「やきそばできました。」の開発がスタートします。

開発にあたっては、北海道在住の学生や若者などの主力ユーザー層との連携が図られ、徹底的な市場調査が行われました。そして、「やきそば弁当」と同様に中華スープをセットにした、北海道限定商品として「やきそばできました。」が誕生しました。発売前には、さっぽろ雪まつりでの大規模なサンプリングが行われるなど、積極的なプロモーションが展開されました。

発売当初は、「やきそば弁当」とは異なる特徴がありました。バリエーションは一般的な普通サイズのみで、「やきそば弁当」のチキンメンチ風乾燥成型肉に対抗してフリーズドライ豚肉を使用。ソースはあっさりとした味付けでした。その後、2005年4月4日、ソースを「焦がし旨ソース」に、中華スープをわかめ入りへと変更する商品リニューアルが行われます。さらに2007年5月にはソースが「コク旨ソース」へと進化しました。

しかし、2009年3月、一時的に販売を終了。同年4月20日、「北海道の新定番！」をコンセプトに、価格をオープンプライス制に変更、スープを省略、具材をキャベツのみに、麺の量を100gから90gに減らすなど大幅な仕様変更を行い、リニューアル発売されました。

2010年3月には、「日清北の焼そば」という新たな北海道限定カップ焼きそばも発売。当初は「やきそばできました。」と並行して販売されましたが、最終的には「北の焼そば」のみの販売となりました。

「やきそばできました。」は、ソース味以外にも様々なバリエーションが展開されました。スープは付かないものの、ジンギスカン風味、海鮮うましお味、オニオンバター醤油味、ネギ塩、だし醤油味など、北海道の食材や味覚を反映した商品が、レギュラー商品や期間限定商品として発売されていました。

CMには、道内の大学生、華原朋美、TEAM NACSの安田顕、森崎博之、音尾琢真、そして及川光博が出演。TEAM NACSのメンバーが出演したCMでは、森崎はレゲエ、音尾はソーラン節、安田はムード歌謡といったスタイルで「やきそば弁当」を意識した演出が話題となりました。

「やきそばできました。」は、北海道のカップ焼きそば市場における激しい競争の中で誕生し、進化を遂げた商品です。その歴史は、地域に根付いた商品開発と、消費者の嗜好の変化、そして企業の戦略が複雑に絡み合った、興味深いものです。 北海道の食文化の一端を垣間見ることができる、象徴的なカップ焼きそばと言えるでしょう。

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