ゆりかごの横で胴着を結ぶ女性

ピーテル・デ・ホーホの『ゆりかごの横で胴着を結ぶ女性』

ピーテル・デ・ホーホの傑作『ゆりかごの横で胴着を結ぶ女性』は、1660年から1663年の間に制作されたオランダ黄金時代を代表する作品です。この絵画は現在、ベルリン絵画館に所蔵されています。

作品の概要

デ・ホーホは17世紀後半に流行したオランダ室内画のパイオニアとして知られており、彼の作品は精密な遠近法を取り入れた室内の描写が特徴です。本作においても、まるでそこにいるかのように感じさせる温もりある室内空間が見事に表現されています。

この絵の中心には、赤ん坊のゆりかごの横に座る母親が描かれています。授乳を終えたばかりの母親は、自らの胴着を整えながら、ゆりかごに横たわる赤ん坊に微笑みかけています。彼女の姿は理想的な母親像を象徴しており、家庭を取り仕切る主婦としての役割をさらに強調しています。この空間は、明るい光が窓から差し込み、家具やデコレーションが巧みに配置されることで、秩序と安らぎを感じさせる空間となっています。

画面の詳細

背景には青と白の縞模様のカーテンが掛けられた支柱付きのベッドがあり、部屋の板張りの壁からは真鍮の鍋と赤いスカートが垂れ下がっています。母親の横には愛犬がいて、穏やかにくつろいでいる様子が描かれています。また、右側には高い窓があり、開閉扉で半分隠された状態で、日差しが差し込んでいます。この窓の下にはロウソクと水差しが置かれたテーブルがあり、これら全てが一層、家庭的な温もりと安息の空間を演出しています。

部屋の奥には、小さな少女が半分開いた玄関ドアの前に立っており、その微笑ましい姿が家庭の温かさを強調します。陽光がこのドアから入ってくる様子は、穏やかな日常の一コマを際立たせています。

歴史と評価

本作は、1910年に研究者ホフステーデ・デ・フロートによって記録に残されましたが、その中でも特に母親の神秘的な微笑みが印象的であると評されています。デ・フロートは、この絵画が持つ魅力や技術的な完成度についても言及しています。また、作品は1790年にパリで売却された際、1500フランで取引されたとの記録があります。その後も所有者が変わりながら、1876年には135,000フランで売却され、最終的にはベルリン美術館に収蔵されることとなりました。

結論

デ・ホーホの『ゆりかごの横で胴着を結ぶ女性』は、彼の鮮やかな技術と家庭の美しさを同時に表現した名作です。この絵画は、オランダ室内画の傑作として後世に語り継がれ、見る人に深い感銘を与え続けています。

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