りゅう座イオタ星

りゅう座ι星 (イオタせい)

りゅう座ι星（りゅうざイオタせい）は、北天の星座であるりゅう座に属する恒星です。地球からは約103光年の距離に位置しており、見かけの明るさは3.29等級と、肉眼でも比較的容易に見つけることができる3等星に分類されます。この星はスペクトル型がK2 IIIに分類される橙色の巨星であり、その直径は太陽の約12倍にも達すると推定されています。

流星群との関連

りゅう座ι星は、毎年1月上旬に活動するしぶんぎ座流星群と歴史的なつながりがあります。流星群は通常、その輻射点（流れ星が飛び出してくるように見える天球上の点）がある星座の名前が付けられますが、しぶんぎ座流星群の輻射点はこの星の近傍に位置しています。かつて、「しぶんぎ座」という星座が存在した時代には、この流星群は正式にその名を冠していました。星座としてのしぶんぎ座は現在では廃止されていますが、りゅう座ι星との位置関係は、その流星群の歴史を知る上で興味深い点と言えます。

太陽系外惑星

2002年、りゅう座ι星の周囲を公転する太陽系外惑星の存在が確認されました。この惑星はりゅう座ι星bと呼ばれています。

国際天文学連合（IAU）は、一般の人々が太陽系外惑星系の固有名を提案し投票する機会を提供しています。2015年に実施された「NameExoWorlds」キャンペーンにおいて、りゅう座ι星とその惑星も命名対象となりました。その結果、恒星には「エダシク（Edasich）」という固有名が正式に承認され、惑星りゅう座ι星bには「ヒュパティア（Hypatia）」という固有名が与えられました。

惑星名「ヒュパティア」は、スペインの学生団体「Hypatia」によって提案された名前です。この名称は、5世紀初頭に古代エジプトのアレクサンドリアで活動した著名な女性天文学者、数学者、哲学者であるヒュパティア（紀元350年頃 - 415年）に由来します。彼女は新プラトン主義哲学の主要な提唱者の一人であり、アレクサンドリアの学術の中心的人物でしたが、紀元415年に不幸な最期を遂げました。

名称の由来と歴史

恒星の固有名「エダシク（Edasich）」は、その語源をアラビア語の「al-dhīkh」に持っています。この語は「雄のハイエナ」を意味するとされています。古い文献や星図にも、この名称に関連する記述が見られます。例えば、「Century Cyclopedia」には「Eldsich」として記録されているほか、15世紀のティムール朝の天文学者ウルグ・ベクの星表や、ドイツのドレスデンにある天球儀（Dresden Globe）においては「アル・ディバ（al-Dibā）」と呼ばれていました。これらの異なる名称は、時代や文化、地域によって星の呼び名が多様であったことを示唆しています。

2015年のIAUによる固有名承認により、「エダシク」がりゅう座ι星の公式な固有名として確立されました。この星は、そのスペクトル分類、流星群との歴史的な関連、そして太陽系外惑星系の存在によって、天文学的に興味深い研究対象となっています。

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