れいめい型巡視船

れいめい型巡視船：尖閣諸島警備の要

2012年の尖閣諸島国有化以降、同諸島周辺海域における中国公船の活動が活発化しました。領海侵入や徘徊といった事案の増加を受け、海上保安庁は既存の巡視船による警備体制を強化しましたが、中国側の海上保安機関の整備・強化も進み、より強力な対応が求められるようになりました。

こうした状況を踏まえ、2016年、海上保安体制強化のため過去最大規模の予算が計上され、その中で「れいめい」型巡視船の建造計画が決定されました。本型は、尖閣諸島における領海警備の強化と、大規模な事案への同時対応能力向上を目指して設計されました。

設計と性能

「れいめい」型は、以前建造された「あきつしま」型巡視船をベースに、設計面での改良を施した発展型です。建造時期が約6年離れているため、様々な変更が加えられており、「あきつしま」型とは異なる特徴を有しています。

例えば、後檣は「あきつしま」型と異なり、サーチライトや火器管制システム(FCS)の台座を兼ねた塔状のマストとなっています。居住区画は、船員の居住性を向上させるため、騒音対策に配慮した設計が施され、配置や制振材の活用により静穏性が確保されています。また、長期にわたる警備活動に対応できるよう、清水や食料などの搭載スペースも十分に確保されています。

高い航行性能を実現するため、SEMT ピルスティク12PC2-6Vディーゼルエンジン4基を搭載し、合計36,000馬力を発揮します。このエンジンは、経済性と低速連続航行能力を高めるため、低負荷域での燃焼効率が改善されています。推進器には可変ピッチプロペラが採用されています。速力は25ノット以上を確保しています。建造費用はネームシップで262億円にのぼります。

装備

兵装は、70口径40mm単装機関砲（新型ボフォースMk.4）と20mm多砲身機関砲をそれぞれ2基ずつ搭載しており、「あきつしま」型と同等の火力を有します。これに加え、遠隔放水銃、停船命令表示装置、遠隔監視採証装置なども搭載されています。

船体両舷には、高速警備救難艇、全天候型救命艇、警備艇を搭載します。搭載艇の種類と数は「あきつしま」型と同様です。ヘリコプター格納庫はスーパーピューマ225（EC225LP）2機収容可能ですが、搭載数は1機とされています。

搭載ヘリコプターは、「七ツ島運航支援センター」（2027年10月運用開始）で一括運用されることになり、各巡視船の運用に合わせて必要な際に派遣される体制となっています。これは、鹿児島保安部所属のヘリコプター搭載型巡視船5隻（2027年10月現在、「れいめい」型2隻、「しゅんこう」型3隻）に共通する運用方法です。

まとめ

「れいめい」型巡視船は、中国公船の活動活発化という厳しい情勢に対応するため、高い航行性能と充実した装備を備えた、海上保安庁の主力巡視船です。尖閣諸島周辺海域の警備強化に大きく貢献すると期待されています。今後の運用状況にも注目が集まります。

もう一度検索