わが胸に歌は消えず

橋幸夫のシングル『わが胸に歌は消えず』

『わが胸に歌は消えず』は、橋幸夫が1962年にリリースした28枚目のシングルで、レコード会社ビクターから発売されました。この楽曲は、作詞を佐伯孝夫、作曲を吉田正が手掛けており、橋の両恩師による作品です。音楽だけでなく、歌詞も非常に印象的で、特に故郷をテーマにした内容となっています。

歌の特徴と構成

橋の曲の中で、特に魅力的な点は、曲の途中に「故郷（ふるさと）」の唱歌が挿入されていることです。この唱歌は、高野辰之が作詞し、岡野貞一が作曲したもので、楽曲の1番と2番の間にそのまま取り入れられています。これは、橋の故郷を思い起こさせる象徴的な部分であり、聴く者にとって感情的な響きを与えます。

具体的には、佐伯による歌詞が少年時代のふる里の情景を思い出させるものであり、その後に続く「ウサギ追いしかの山　小ぶな釣りしかの川　夢は今もめぐりて　忘れがたき故郷」という「故郷（ふるさと）」の1番が演奏され、聴く者を惹きつけます。

故郷を歌った楽曲

橋の楽曲の中で、故郷を歌ったものはこの曲を含めて3曲目になります。それ以前の曲には、「故郷の花はいつでも紅い」や「故郷の灯は消えず」がありますが、これらはB面に収録されていました。今回の『わが胸に歌は消えず』は、故郷に関連する楽曲が初めてA面曲として採用されたという点が特筆すべきです。この選択は橋の母の影響もあり、彼女が唱歌「故郷」を非常に好んでいたことから、佐伯と吉田がこの曲を作り上げることとなったとされています。

c/w曲とテレビドラマ

同シングルには、c/w曲として『雲が呼んでいる』も収録されています。こちらも佐伯と吉田の手による作品で、NHKのテレビドラマ『雲が呼んでいる』の主題歌として使われました。ジャケットにもその旨が記載されています。

アルバム収録情報

『わが胸に歌は消えず』は、LP盤のみの収録となり、近年のCD盤には含まれていないため、特にオリジナルの音源にこだわるファン層にとって貴重なアイテムとされています。具体的な収録アルバムとしては、1963年発表の『橋幸夫傑作集第6集』や『橋幸夫ヒットソング集第2集』が挙げられます。また、CD-BOXには『橋幸夫大全集』や『橋幸夫ベスト100+カラオケ15』が含まれています。

テレビドラマ『雲が呼んでいる』の内容

このシングルの背景には、橋が出演したNHK制作のドラマ『雲が呼んでいる』があります。このドラマは昭和37年の終戦記念日に放送され、橋が演じたのはヘリコプターの操縦士を夢見る若い整備士という役柄でした。彼の役には、梓みちよが相手役として登場し、二人の共演は本作が唯一の機会となりました。橋自身はこのドラマでのヘリコプターの搭乗体験を、「乗り心地はすこぶる爽快。歌もドラマも楽しい思い出」と振り返っています。

このように、『わが胸に歌は消えず』は音楽としてだけでなく、ドラマとの関わりによっても多くの人々の心に残る作品となっています。

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