わたしをみつけて

小説『わたしをみつけて』の概要

『わたしをみつけて』は中脇初枝による書き下ろし小説で、2015年にNHK総合の「ドラマ10」でテレビドラマ化された話題作です。この小説は、2012年に発表された『きみはいい子』と同じ桜が丘の町を舞台に、児童養護施設で育った准看護師の山本弥生が自分の本当の居場所を見つける物語です。

執筆の背景

本作は、以前の作品『きみはいい子』の未発表の短編から着想を得て、新たに書き上げられました。前作では「いい子」とは言われない子供が主人公でしたが、今作の弥生は「いい子」として周囲から見られることに苦しみを抱えています。著者は、どんなに降り続いている雨でもいつかは止むというメッセージを込めて、弥生が菊地と出会った雨の日のシーンを重要なポイントに設定しました。

あらすじ

弥生は慈森会桜が丘病院の准看護師として働いています。彼女は生後すぐに親に捨てられ、児童養護施設で育ちました。常に「いい子」でいることを求め続けてきた彼女は、院長や大野医師といった人々の横暴な態度に対して何も言えない日々を送ります。そんなある日、新たに赴任してきた藤堂優子師長が病院の雰囲気を一変させていきます。彼女は患者や職員の問題を見抜き、的確に対処することで、医療の現場を良い方向へ導いていきます。

ある土曜日の夜、急患として運ばれた楠山幸一が院長による誤診で危機に瀕し、短いながらも弥生は真実を知らないまま院長の指示に従うことの無力感を味わいます。藤堂の厳しい評価を受け、弥生は自分の経験の浅さと向き合わせられることとなります。やがて交通事故の直後、弥生は菊地という男性と再会し、彼の困難に対処することになり、さらに医療に対する姿勢を試されることになります。

登場人物

物語の中で、弥生の周囲には個性的なキャラクターたちが存在しています。弥生は准看護師としての経験を持つ一方で、自身のトラウマを抱えており、その影響で他者との関係に苦悩しています。藤堂優子は新任の師長として弥生の成長を導く存在であり、彼女の強い姿勢が弥生にとっての希望となる一方で、厳しさももたらします。菊地勇は弥生の通勤途中に出会う男性で、弱さを抱えながらもあたたかみのある人物として描かれています。彼との関わりが物語において重要な役割を果たします。

まとめ

『わたしをみつけて』は、医療の現場をテーマにしつつ、登場人物たちがどのように自分自身と向き合いながら成長していくのかを描いた作品です。人間関係や社会の中での自らの役割を見つけることがテーマとなっており、読者に深いメッセージを届けています。また、リーダビリティと抒情性が融合した魅力的な作品に仕上がっています。

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