わたり

わたりについての総合的な解説

「わたり」とは、公務員の給与制度において、職務に適応した等級に従わない形での給与の付与を指します。この制度は、具体的には、指定された役職や職務内容の基準に基づいていない形で、職員の給与が設定されることを意味します。例えば、主任職の職員が係長並みの給与を受け取るようなケースが該当します。特にこのような仕組みは、東京都の特別区で「級格付制度」として知られています。

わたりの背景と運用

このような制度が存在する理由は、主に長年にわたる勤務や職務内容の変化に起因しています。例えば、単純な年功序列の原則に基づくと、本来は昇任によって給与が上がるべき職員が、そのポストが満杯であるため昇進できず、結果的に「わたり」が発生するのです。公務員は職に応じて給与が算出される一方で、実際には役職名を変えずに額外の報酬を支給するといった不透明な支給方法が行われることがあります。

公務員法との矛盾

「わたり」は、国家公務員法および地方公務員法に示された給与規定に反する危険性が高いという指摘があります。民間企業と比較すると、その給与の透明性が欠如しているために、公共の場でもしばしば問題視されてきました。これに対抗して、労働組合は「わたり」の廃止を求め、その具体化を図ってきました。

メディアでの注目

「わたり」は、しばしば税金の無駄遣いの象徴としてメディアに取り上げられます。特に人件費の増大が社会問題となる中で、この制度への批判は根強く存在します。総務省が2009年4月1日付けで実施した調査によれば、219の地方公共団体に「わたり」の制度が存在することが報告されています。その後、この制度を導入している団体は少なくなってきたものの、2016年4月1日現在でも16市町村で何らかの形で存続しているとされています。

最近の動向

最近の動向としては、「わたり」を廃止しようという制度改革の動きが見られます。公務員批判の高まりを受けて、国や地方公共団体は職務給原則に基づいた給与制度の確立を目指しており、成果主義の導入が進められています。しかし、労働組合側は、職員がより適切に配置されるための、柔軟な職定員の設定を求める立場にあります。今後さらに、この問題に対する議論や改革の進展が期待されます。

まとめ

このように「わたり」は、公務員の給与制度の中で独特な位置を占めています。時代の変化とともに見直しが進められることが、職務給原則の確実な実現や公務員の透明性向上に寄与することが求められています。今後もこの制度について深く考察し続けることが必要です。

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