わるいやつら

『わるいやつら』

松本清張による長編小説『わるいやつら』は、1960年から1961年にかけて『週刊新潮』に連載され、その後1961年に単行本が新潮社から出版されました。この作品は、医師が自身の社会的地位を利用し、周囲の人々との複雑な関係を背景に犯罪に手を染める様子を描いています。ジャンルとしては長編ピカレスク・サスペンスに分類され、公開から多くの読者に支持を受けてきました。

あらすじ

物語は、東京の中野にある病院の院長である戸谷信一を中心に展開されます。著名な医師である亡父の病院を受け継いだ戸谷は、経営が厳しく赤字が続く中、愛人から金を受け取りながら病院を運営しています。妻とは別居中で、最近出会ったデザイナー、槙村隆子に強い惹かれを感じ、結婚を考えていますが、その資金も愛人から吸い上げる算段です。しかし、思いも寄らぬ愛人の夫の急死という出来事が、戸谷とその周囲の運命を一変させます。

出版と企画

この小説は、単行本出版後に新潮社ポケット・ライブラリ版や新潮文庫版として再出版され、光文社のカッパ・ノベルス、文藝春秋の全集にも収録されています。また、後に電子書籍版も登場し、現在でも多くの読者に親しまれています。

登場人物

• - 戸谷信一: 院長として病院を経営する主人公。
• - 槙村隆子: 若手デザイナーで、戸谷に魅了される美貌の女性。
• - 藤島チセ: 高級洋品店の経営者で戸谷の愛人。
• - 横武たつ子: 戸谷のもう一人の愛人。
• - 寺島トヨ: 看護婦長であり、複雑な情念を抱える。
• - 下見沢作雄: 弁護士で、様々な事情に通じている。

執筆の背景

本作のアイデアは作者の経験から生まれました。母の死後、埋葬許可証の手続きが非常に簡単だったことに驚き、医師の証明書が形式的に扱われている現状を知り、これを物語の構造に取り入れています。

映画化とテレビドラマ

1980年には松竹によって映画化され、映画も成功を収めました。また、この作品は過去に何度もテレビドラマとしても制作されており、1985年版、2001年版、2007年版、2014年版と続く各シリーズは、異なるキャストとスタッフによって新たな解釈を与えています。特に2007年版では、物語の視点が看護師にシフトされるなど、独自の展開が見られました。

このように、『わるいやつら』は時代を超えて多くの読者、視聴者に影響を与え続けている作品です。松本清張の鋭い観察力と人間の複雑さを描く手法は、今なお色あせることなく、様々なメディアで新たな生命を吹き込まれています。

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