アイとサムの街

『アイとサムの街』は、児童文学作家である角野栄子によって書かれた小説作品で、1989年にポプラ社から出版されました。挿絵は牧野鈴子が担当しています。この物語は、1980年代後半を舞台に、双子の姉妹アイとミイ、そして少年サムが繰り広げる冒険を描いています。

物語の舞台は、萩寺町という場所です。双子の姉妹であるアイとミイは、幼い頃に母親を亡くし、父親は仕事でドイツにいるため、叔母である漫画家のソラさんと共に暮らしています。

おてんばな性格のアイは、廃品回収屋のカメさんのところで廃品を寄せ集め、様々な仕掛けを搭載した自作の折り畳み自転車「ねこちゃん」を作り上げます。ある夜、アイは「ねこちゃん」にミイを乗せて、真夜中の散歩に出かけます。その途中、2人は動物園の近くで奇妙な光を目撃します。怖くなって一度は家に帰るものの、アイは光の謎を解明したいという強い思いに駆られ、再び動物園へと向かいます。そこでアイは、同じように怪しい光に惹かれてやってきた、近くのマンションに住む少年オサム（サム）と出会います。

アイとサムは、共に光の謎を解くため、「真夜中の冒険」へと繰り出します。冒険の中で、二人はこの街が抱える過去のドラマ、戦後に生きた人々の光と影に触れることになります。物語は、単なる子供向けの冒険譚にとどまらず、過去の歴史や人々の想いを感じさせる、少し大人びた雰囲気も持ち合わせています。

この小説は、角野栄子の代表作である『魔女の宅急便』と同じ作者による作品ということもあり、注目を集めました。そして、1991年にはTBS系列の昼ドラマ枠「花王 愛の劇場」にてテレビドラマ化されました。このドラマは、『夏休み特別企画』と題され、全30話で放送されました。制作は泉放送制作とTBSが担当し、夏休み期間中の小学生を主な視聴者層としていました。

ドラマ版では、原作のストーリーにタイムスリップ要素が加えられ、さらに物語が広がっています。キャストには、アイ役に上田尚美、ミイ役に上田和美、サム役に井上大輔が起用されました。また、伊藤かずえ、谷啓、古尾谷雅人、布川敏和、河相我聞、岸部シローといった実力派俳優たちが脇を固めました。主題歌は、宍戸留美が歌う「おとこのこ」で、作詞は角野栄子自身が手掛けています。

『アイとサムの街』は、単なる児童文学の枠を超え、子供から大人まで楽しめる魅力的な作品です。小説版、ドラマ版ともに、それぞれの魅力があり、多くの人々に愛されています。

この作品は、角野栄子の独特の世界観と、子供たちの冒険心、そして歴史に対する深い洞察が組み合わさった、特別な物語と言えるでしょう。

関連情報として、本作は角野栄子作品の一つであり、テレビドラマは「花王 愛の劇場」で放送されたこと、また、テレビドラマデータベースで詳細が確認できることが挙げられます。

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