アイム・ア・ボーイ

「アイム・ア・ボーイ」（I'm a Boy）は、イギリスのロックバンド、ザ・フーが1966年に発表したシングルです。作詞・作曲はピート・タウンゼントが担当しました。この楽曲はオリジナル・アルバムには収録されていません。

この曲は、1966年3月リリースの「恋のピンチ・ヒッター」以来となる純粋な新曲で、全英2位という大ヒットを記録しました。楽曲の冒頭部分では、タウンゼント自身がリード・ボーカルを務めています。

「アイム・ア・ボーイ」は、タウンゼントが構想していたミュージカル「クアッズ（Quads）」から生まれた楽曲です。「クアッズ」の舞台は西暦2000年。子供の性別を自由に選択できる時代を背景に、ある女性が4人の女の子を望んで出産するものの、そのうち1人が男の子として生まれてきてしまいます。母親はその男の子を女の子として育てようとする、という内容でした。ミュージカル「クアッズ」自体は完成に至らず、この楽曲のみが残されました。

この楽曲は、当時ザ・フーのマネージャーだったキット・ランバートが初めてプロデュースを手掛けた作品でもあります。曲の間奏部分のコーラスは、ランバートがタウンゼントに聴かせていたイギリスのバロック作曲家、ヘンリー・パーセルの楽曲からインスピレーションを受けています。

B面に収録された「イン・ザ・シティ」は、ザ・フーの楽曲の中で唯一、ジョン・エントウィッスルとキース・ムーンの共作です。しかし、レコーディングのスケジュールがタウンゼントとロジャー・ダルトリーに知らされていなかったため、エントウィッスルとムーンの2人だけで録音が行われたというエピソードがあります。

「アイム・ア・ボーイ」には、いくつかの別バージョンが存在します。

1971年にリリースされたベストアルバム『ミーティ・ビーティ・ビッグ・アンド・バウンシィ』には、オリジナル版よりもテンポを落とし、ジョン・エントウィッスルのフレンチホルンをフィーチャーしたバージョンがステレオ・ミックスで収録されています。このバージョンは、オリジナル版リリース後の1966年10月に再レコーディングされたものです。また、このバージョンのモノラル・ミックスが、ベストアルバム『Ultimate Collection』の英米盤で発見されています。オリジナル・バージョンにもステレオ・ミックスが存在し、これら4つのバージョンは2008年の『ア・クイック・ワン』コレクターズ・ボックスおよび2012年のコレクターズ・エディションに収録されました。その他に、オリジナル・バージョンからイントロのコーラスやエントウィッスルのホルンが欠落したバージョンも存在し、これはボックスセット『Thirty Years of Maximum R&B』（1994年）に収録されています。

「アイム・ア・ボーイ」は、コンサートでも頻繁に演奏されました。1995年にリリースされた『ライヴ・アット・リーズ』25周年版には、1970年のリーズ大学公演のライブ音源が収録されています。

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