アウストラロピテクス・ガルヒ

アウストラロピテクス・ガルヒ（Australopithecus garhi）は、アウストラロピテクス属に分類される化石人類の一種です。1996年、エチオピア人古人類学者のベルハネ・アスファウとアメリカ人古人類学者のティム・ホワイト率いるチームによって発見されました。

発見当初、アウストラロピテクス・ガルヒは現生人類の直接的な祖先、つまりアウストラロピテクス属とヒト属を結ぶミッシングリンクであると考えられていました。しかし、その後の研究により、アウストラロピテクス・ガルヒは他のアウストラロピテクス属の種よりも進化していたものの、ヒト属の祖先候補の一つに過ぎなかったという見方が強まっています。化石の年代は、約200万〜300万年前と推定されています。

化石が発見されたのは、ティム・ホワイトが1996年にエチオピアのアワッシュ川中流域、Bouri村近郊で発見しました。発見された種は新種と確認され、1997年11月20日にA. garhiとして正式に記載されました。種名のgarhiは、アファール語で「驚く」を意味する言葉に由来します。

BOU-VP-12/130などの化石から、脳の容積は約450ccと推定され、他のアウストラロピテクス属と大きな差は見られません。しかし、臼歯と小臼歯は他のアウストラロピテクス属よりも大きく、パラントロプス・ボイセイのものに近い特徴を持っています。もしアウストラロピテクス・ガルヒがホモ・ハビリスなどヒト属の直接の祖先であるならば、上顎の特徴の多くは、20万〜30万年の間に急速な進化を遂げたと考えられます。

アウストラロピテクス・ガルヒの化石が発見された場所の近くからは、約250万〜260万年前のものと推定される、オルドワン石器によく似た原始的な石器がわずかに見つかっています。この発見は、1999年4月23日付けのサイエンス誌で発表され、人類に繋がるホモ・ハビリスよりも前に、すでに道具が使用されていた可能性を示唆するものとして注目を集めました。それまで古人類学者の間では、ヒト属の初期の種が最初に道具を使い始めたと考えられていたため、この発見は定説を覆すものでした。さらに、エチオピアのBouri村の別の場所からは、約250万年前のものと推定される3000点もの石器が発見されており、当時の人類が石器製作技術を持っていたことを裏付けています。

参考文献:
Asfaw, Berhane, et al. (1999). “Australopithecus garhi: a new species of early hominid from Ethiopia” (PDF). Science 284: 629-635.

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