アウトストラーダ

イタリアのアウトストラーダ：世界初の一般用高速道路

アウトストラーダ(Autostrada)とは、イタリア語で「自動車道路」を意味する、イタリアの高速道路ネットワークです。単なる自動車専用道路ではなく、一般市民の移動を目的とした、世界で初めて建設された都市間高速道路システムとして歴史的に重要な位置づけにあります。

世界初の一般用高速道路としてのアウトストラーダ

アウトストラーダの建設は、1922年、ミラノの技師ピエロ・プリチェッリによる提案に端を発します。当初はミラノ、ヴァレーゼ、コモなどを結ぶ計画でしたが、ファシスト政権の支援を受け、1924年にミラノとガッララーテ間を結ぶ2車線の道路が完成しました。この点が重要です。それ以前の自動車専用道路、例えばアメリカのロングアイランド・モーターパークウェイは、娯楽やレース、軍用を目的としたものであり、アウトストラーダのように一般市民の移動を目的としたものではありませんでした。しばしば世界初と称されるドイツのアウトバーンも、この点においてアウトストラーダとは異なります。アウトストラーダは、純粋に一般市民のための国内インフラとして計画・建設された点に、その歴史的意義があります。

アウトストラーダの進化と発展

建設開始から、アウトストラーダは着実に拡張・延伸されてきました。1930年代末には400km以上に達し、4車線に拡張されるなど、イタリアの交通インフラとして大きく発展しました。主要都市だけでなく地方都市にも接続し、レンタカー文化の発展と相まって、イタリア社会における自動車文化の普及に貢献しました。戦後も継続的に整備が進められ、2019年末時点では総延長距離は7000km近くに達しています。

アウトストラーダの特徴

アウトストラーダは、平面交差点や信号機がなく、自動車と150cc以上の自動二輪車が通行できる有料道路です。制限速度は130km/hですが、条件を満たす区間では150km/hへの引き上げが可能となっています。しかし、道路管理者側の訴訟リスクへの懸念から、2021年8月現在、150km/h規制の区間はまだ存在していません。ドイツのアウトバーンと接続していますが、アウトストラーダ区間は有料です。

アウトストラーダの運営と料金システム

アウトストラーダの運営は、旧公団系のアウトストラーデ社とアナス社が中心となっています。その他にも複数の運営会社が存在し、民営化が進んでいます。料金収受システムとしては、1989年に導入された無線式料金収受システム「テレパス(TELEPASS)」が有名で、後のETCシステムの先駆けとなりました。近年、アナス社は無料区間の約1300kmを有料化する計画を進めており、「フリーフロー」システムの導入が進められています。フリーフローシステムは、自動ナンバー読み取りで通行料金を後日口座から引き落とす仕組みで、料金所が不要になります。

アウトストラーダの路線

2019年末時点で、アウトストラーダの総延長距離は6,965.4kmに及び、A1から連番で路線が設定されています。一部の路線には固有の名称が付けられており、ミラノ―ローマ―ナポリ間を走るA1は「アウトストラーダ・デル・ソーレ（太陽道路）」という愛称で親しまれています。詳細な路線については、別途イタリアのアウトストラーダ一覧を参照ください。

アウトストラーダとイタリア社会

アウトストラーダは、単なる高速道路システムではなく、イタリアの社会経済発展に大きく貢献しました。人々の移動手段を向上させ、観光やビジネスの発展を促し、イタリアの近代化に重要な役割を果たしました。アウトストラーダの歴史と現状を理解することは、イタリアの社会構造やインフラ整備の歴史を理解する上で重要な要素となります。今後、フリーフローシステムの導入や、さらなる拡張・延伸が進むことで、アウトストラーダはますます重要な交通インフラとして機能していくことが期待されます。

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