アウト・オブ・ノイズ

アルバム『アウト・オブ・ノイズ』の紹介

坂本龍一が2009年に発表したオリジナル・アルバム『アウト・オブ・ノイズ』は、彼の音楽的探求の一環として、実験的かつ革新的なアプローチを示しています。この作品は、前作『キャズム』から約5年の歳月を経てリリースされ、音楽の基本的要素をバラバラにし、再構築する試みがなされています。

音楽の脱構築

『アウト・オブ・ノイズ』は、旋律、和音、拍子といった伝統的な音楽の要素を排除し、環境音、電子音、楽器音が一体となることで、非常にユニークな音の風景を作り出しています。特に、北極圏の自然環境で録音された音が多く取り入れられており、自然との一体感が感じられる作品となっています。例えば、氷河の流れる音や、犬の鳴き声、ベルの音などがふんだんに使用されています。音楽的手法としては、繰り返しの演奏や不協和音が取り入れられ、聴く者に新しい感覚を提供しています。

環境への配慮

また、アルバムの販売から得た収益の一部がカーボンオフセットに使われ、環境を意識した取り組みも行われています。こうした配慮は、坂本の音楽だけでなく、エコロジーに対する深い理解を反映しています。

リマスター版のリリース

さらに、2024年9月にはリマスター版『out of noise - R』が登場しました。オリジナル楽曲の一部が変更され、新たに未発表の曲が追加されています。特に、オリジナルの「to stanford」が収録されていない点は興味深いところで、新しい曲への期待を高めます。

収録曲について

アルバムには、いくつかの印象的なトラックが収められています。

• - hibari: ピアノの即興演奏を基に、様々なフレーズが重なり合っていく曲であり、グレン・グールドの影響を受けたという背景があります。
• - hwit: イギリスの弦楽団フレットワークが演奏した、白い世界をイメージさせる曲名。聴く側の解釈に任せるというスタンスが特徴的です。
• - still life: ピアノの即興演奏に対するフレットワークの反応から生まれた静けさを感じる曲です。
• - in the red: 人の声のサンプリングを使用し、失ったものについての感情が込められています。特に、坂本が人の声を録音する際の努力が印象に残ります。
• - nostalgia: 故郷や消え去ったものへの思いが表現された曲で、視覚的にも感情的にも深い響きを持っています。
• - disko, ice, glacier: これらは北極圏からの音を用いた作品で、自然音を生かす形で構成されています。

結論

『アウト・オブ・ノイズ』は、単なる音楽アルバムを超え、聴く者に新たな体験と啓発をもたらす作品です。坂本龍一の音楽的スタイルは、時に挑戦的でありながら、聴き心地の良さも備えており、そのバランスが多くのリスナーに響いています。これは彼の音楽史に刻まれる重要な一枚となるでしょう。

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