アエリア・エウドキア

アエリア・エウドキア・アウグスタ（Aelia Eudocia, 401年 - 460年）は、東ローマ皇帝テオドシウス2世の皇后として知られています。

生い立ちと結婚

彼女は元々、アテネの哲学者レオンティウスの娘としてアテナイス（Athenais）という名で生まれました。古典文学と修辞学に秀でていたと伝えられています。父の死後、兄弟から相続財産を不当に分け与えられた彼女は、その訴えのためにコンスタンティノープルへ赴きました。そこで彼女の弁舌の才能がテオドシウス帝の姉であるプルケリアの目に留まり、女官として仕えることになります。その後、テオドシウス帝の妻として推薦され、皇后の座に上り詰めました。

421年、アテナイスは洗礼を受けてキリスト教徒となり、アエリア・リキニア・エウドキア（Aelia Licinia Eudocia）と改名しました。同年6月7日にテオドシウス2世と結婚し、後に長女リキニア・エウドクシアを出産。この際に「アウグスタ」の称号を得ました。エウドキアは、自身の兄弟たちをトラキアやイリュリクムのコンスルや知事に任命するなど、影響力を行使しました。

夫婦関係の悪化とエルサレムへの巡礼

しかし、数年後にはエウドキアとテオドシウス帝の夫婦関係は冷え切ってしまいます。438年から439年にかけて、エウドキアはエルサレムへ巡礼に出かけました。皇后としての豪華な装備を伴った巡礼であり、高名な修行者たちと交流し、エルサレムに滞在しました。帰国後、皇姉プルケリアの嫉妬をかったとされています。プルケリアは、一生を神に捧げる独身を誓い、聖母マリアのような存在であろうとしていましたが、エウドキアは実際に聖地を訪れたことで、それに匹敵するほどの存在感を放っていたためでした。

パウリヌスの失脚と再びエルサレムへ

440年、テオドシウス帝の友人であった有力貴族パウリヌスが失脚しました。その原因として、皇帝からエウドキアに贈られたリンゴを、皇后がパウリヌスに与えたという逸話が伝えられていますが、真相は定かではありません。この事件の後、エウドキアは再びエルサレムへ向かい、その後20年間、首都へ戻ることはありませんでした。

エルサレムにて、エウドキアは文学に没頭し、余生を過ごしました。皇后としての華やかな生活から一転、聖地で静かに生涯を終えた彼女の人生は、多くの物語や伝説に彩られています。

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