アオモンイトトンボ

アオモンイトトンボ（青紋糸蜻蛉）

アオモンイトトンボ（Ischnura senegalensis）は、トンボ目イトトンボ科に分類される昆虫です。その名の由来は、オスの腹部に見られる鮮やかな空色の紋様にあります。

形態

体長は約32mm前後で、細身の体型をしています。オスは腹部の第8節と第9節が特徴的な空色をしており、これが名前の由来となっています。一方、メスには2つの色彩型が存在します。一つは緑褐色から濃褐色をした「異色型（メス型）」、もう一つはオスによく似た青色の「同色型（オス型）」です。この色彩の多様性が、アオモンイトトンボの生態において重要な役割を果たしています。

分布と生息環境

アオモンイトトンボは、アフリカ、中東、そして南アジアから東アジアにかけて広く分布しています。日本では、4月から9月にかけて関東以南の本州から南西諸島にかけて見られます。平地の池や沼など、流れの穏やかな水辺を好んで生息し、環境攪乱の影響を受けた場所や、塩分を含む水域、あるいは汚れた水辺でも見られることがあります。しかし、手つかずの自然が残る森林などには生息していません。

メスの色彩多型とセクシャルハラスメントのリスク軽減

千葉大学の高橋佑磨氏の研究によると、メスに複数の色彩型が存在し、その多様性が保たれているほど、オスは効率的にメスを探すことが困難になります。その結果、メスがオスから執拗に交尾を迫られるセクシャルハラスメントのリスクが、メス個体あたりで低下することが確認されました。さらに、セクシャルハラスメントが軽減されることで、集団の増殖性や安定性が高まり、最終的には集団の絶滅リスクも減少するというデータが示されています。

この研究は、生物の多様性が、個体レベルだけでなく、集団全体の生存戦略においても重要な役割を果たしていることを示唆しています。アオモンイトトンボのメスの色彩多型は、単なる外見上の特徴ではなく、集団の存続に関わる重要な要素なのです。

関連情報

アオモンイトトンボ 画像
Notes on dragonflies in Egypt
ウィキスピーシーズ：アオモンイトトンボ
ウィキメディア・コモンズ：アオモンイトトンボ

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