アキノキリンソウ

アキノキリンソウ（秋の麒麟草）

アキノキリンソウ（学名：Solidago virgaurea var. asiatica）は、キク科アキノキリンソウ属に分類される多年草です。日本の秋を代表する野草の一つで、山地や丘陵の日当たりの良い場所に自生します。

特徴

草丈: 70〜80cm程度
花期: 8〜11月
花: 茎の先に総状の黄色い花を多数つけます。
葉: 互生し、茎の下部では先端がとがる楕円形、上部では披針形になります。

分布と生育環境

北海道から九州、朝鮮半島にかけて分布しています。かつては、里山に囲まれた水田の周辺やため池の土手など、身近な場所で見ることができました。リンドウなどと共に小学校の教科書や絵本にもよく登場しましたが、近年では生育環境の減少や荒廃により、その姿を見かけることが少なくなっています。

利用

アキノキリンソウの若葉は食用可能です。水にさらした後、和え物やおひたしなどにして食されます。また、陰干しにしたものは薬用にもなります。

名前と歴史

英名は「Golden Rod」です。ヨーロッパでは古くから薬草として利用されており、その知識は日本の本草書にも影響を与えました。『和蘭薬鏡』（1820年）には「金花草」という名で収載されています。古代ローマ時代には万能薬として、特に傷薬として重宝されていました。

名前の由来は、同じく黄色い花を咲かせるキリンソウに花の様子が似ていることと、秋に花を咲かせることにちなみます。ただし、キリンソウはベンケイソウ科の植物であり、アキノキリンソウとは全くの別種です。

近縁種

アキノキリンソウは変異の多い種であり、いくつかの近縁種や亜種が存在します。

ヨウシュアキノキリンソウ: ヨーロッパ産の基本亜種。
ミヤマアキノキリンソウ: 花が散房状であること、総苞片が4列であることなどがアキノキリンソウとの違いですが、中間的な特徴を持つものも存在し、区別が難しい場合があります。
オオアキノキリンソウ: 北海道から本州北部の海岸に生育する亜種。

別種でありながら、アキノキリンソウと関係の深い植物として、アオヤギバナとイッスンキンカが挙げられます。

アオヤギバナ: 葉が細く、株立ちになるのが特徴です。本州から九州にかけて分布し、渓流の周辺に生育します。アキノキリンソウが渓流植物に進化したものと考えられています。
* イッスンキンカ: 屋久島の高地にのみ生育する小型の植物で、草丈は7cm程度にしかなりません。一種の島嶼型と考えられています。

アキノキリンソウは、日本の秋の風景に欠かせない植物でしたが、近年ではその姿を見る機会が減ってしまいました。生育環境を守り、次世代に伝えていくことが大切です。

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