アクター (漫画)

漫画『アクター』の魅力

『アクター』は、かわぐちかいじによる日本の漫画作品で、1984年から1988年まで講談社の『モーニング』で連載されました。この作品は、現代の日本の映画やテレビドラマの撮影現場を舞台にしています。主人公の竹村雲母を中心に捉えた群像劇は、読者を魅了し、1987年には第11回講談社漫画賞一般部門を受賞するという快挙を達成しました。

作品の背景

『アクター』誕生のきっかけは、かわぐちが当時観た大衆演劇の楽しさから来ていました。この作品は歌舞伎の要素を取り入れつつ「何でもあり」というスタンスで描かれており、その批判精神が作品に独特なエネルギーを与えています。これにより、かわぐちはそれまで苦戦していた漫画家としてのキャリアを一気にメジャーへ引き上げることになりました。

ストーリー概要

物語は、竹村雲母（キララ）が実相寺監督のもとで大衆演劇から映画『ジーザス・クライスト』の主役に選ばれるところから始まります。この役に抜擢されたことで、元の主役であった中条達彦は脇役へと降格させられてしまいます。物語は、キリストとユダの愛憎、またキララと中条の間に生まれる複雑な感情を描いていきます。

撮影の過程で、キララと中条の関係は複雑化し、中条はキララに斬りつけるという暴力沙汰に発展します。完成した『ジーザス・クライスト』は4時間半の上映時間を誇りましたが、興行権を50億円で買いたいと名乗りを上げた黒岩プロの社長からの提案により、長尺の映画が注目を集めます。

続いて、黒岩プロ付の助監督である夢野万作は、キララを主役にした愛憎劇『四谷怪談』を企画します。この作品では、キララと清純派アイドルの菊地英子との間に新たなロマンスが芽生えます。三角関係が絡み合う中、中条も再び現れ、彼らの運命が交錯します。最終的に『お梅の恋』での大ヒットを経るものの、キララは心身に大きなストレスを抱えるようになります。

登場人物とその関係

作品には多くの魅力的なキャラクターが登場します。キララは、幼少期からの家庭環境に複雑な思いを抱える女性で、演技に対する情熱と葛藤を持ち続けます。中条達彦は、ナンバー1アイドルから映画界のスターを目指す男ですが、キララとの出会いによって彼の運命も大きく変わります。

さらには、実相寺監督や黒岩プロの重要なキャラクターたちがそれぞれの立場から物語に彩りを与え、映画業界の実情をリアルに描いています。それぞれのキャラクターが抱える人間関係が、物語をさらに引き立てる要素となっています。

結論

『アクター』は、ただのエンターテインメント作品にとどまらず、映画産業の裏側や人間関係の複雑さを深く探求した作品です。かわぐちかいじのストーリーテリングやキャラクターデザインは非常に卓越しており、心に残る印象を持たせてくれます。この作品を通じて、読者は映画の華やかさの裏に潜む苦しみや葛藤、そして勝利と挫折の物語を体験できることでしょう。

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