アグアテカ

アグアテカの遺跡概要

アグアテカ（Aguateca）は、グアテマラ共和国のペテン県南東部に位置する古典期マヤ文明の遺跡です。この遺跡はペテシュバトゥン盆地にあり、古代マヤ語では「キニチ・ウィッツ（太陽の丘）」と呼ばれていました。アグアテカは、近隣に存在したドス・ピラス王朝の最後の首都であり、古典期マヤ都市の急激な崩壊の様子を今に残しています。

遺構の特徴

遺跡はペテシュバトゥン湖の南端に位置し、高さ約15メートルの切り立った崖の上にあります。アクセスはボートが一般的で、遺跡内部は東西に分断されています。この区分は深さ50から60メートル、幅5から15メートルの天然の堀によってなされています。西側には中央広場と神殿ピラミッドが、東側には宮殿や居住区域が遺されています。また、王朝末期には防御壁が築かれており、アグアテカは堅牢な防衛システムを備えた都市であったことが伺えます。

都市の歴史的背景

アグアテカの歴史は先古典期にさかのぼります。この地域では先古典期後期に定住が始まり、当時の建造物はパシオン川流域のセイバルの特徴と共通しています。古典期前期には目立った建設活動は見られませんが、遺跡の南東部の断崖からは古典期に建てられた石碑が発見されています。この石碑はタマリンディート王朝によって建造されたものと考えられ、古典期前期から後期にかけての重要な遺物です。

650年ごろ、ティカルから追放された支配者バラフ・チャン・カウィールの勢力がアグアテカ近隣にドス・ピラスを建設します。彼はティカルの王族出身であり、アグアテカとドス・ピラスの支配者はティカルと同じ紋章文字を使用していました。アグアテカは700年を過ぎる頃には中規模の都市として形を整え始め、戦争の勝利を記念する石碑が残されています。

726年ごろにはカウィール・チャン・キニチが治めていたとされる時代にドス・ピラスが放棄され、王朝の首都がアグアテカに移動します。この時アグアテカは依然としてペテシュバトゥン盆地を支配していましたが、王朝は次第に弱体化していきました。

アグアテカで最後に記録された長期暦は810年で、中央広場の近くにある未完成の神殿の前で見つかっています。王朝末期には都市の周囲に防御壁が築かれていましたが、830年頃には何者かによって破壊され、完全に放棄されたと考えられています。

発掘活動

アグアテカの発掘は1950年代後半にイアン・グラハムによって始まりました。彼は石碑の調査や地図製作を行いました。その後、1980年代にはスティーブン・ハウストンがドス・ピラスとの関係について解析を進めました。1991年からの発掘プロジェクトでは、猪俣健が率いるチームが遺跡の放棄された住居から多くの遺物を発見しました。これらは都市の貴族が急な避難を強いられたことを示しています。

2002年から2003年には二回目の発掘が行われ、神殿が建設途上にあったことが確認されました。これらの発見は、アグアテカの過去を解明する手がかりとなっています。

古典期マヤ文明の崩壊

古典期マヤ文明の崩壊の原因は未だに解明されていませんが、アグアテカや近隣の遺跡はこの崩壊の証拠を多く提供しています。特にアグアテカは王朝末期に防御壁を築いており、この取り組みは当時の危機感を象徴しています。他の遺跡でも同様の状況が確認され、都市間の戦争が激化し、安寧が失われていった様子が伺われます。

人口の過剰や環境の変化など複数の要因が考えられていますが、都市間戦争の性質が変化し、かつての捕虜をつかまえる戦争から破壊的なものへと移行していったのではないかと推測されています。

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