アジマス

アジマスとは

アジマス（azimuth）は、磁気記録方式において、磁気ヘッドの「間隙」（ヘッドギャップ）の向きと、磁気テープの走行方向がなす角度のことを指します。固定ヘッド方式では、テープの走行方向との角度そのものを指し、回転ヘッド方式では、テープとヘッドの相対的な移動方向との角度を指します。

アジマスによる特性の変化

テープレコーダーなどの水平磁気記録方式では、電流の時間的な変化を磁気ヘッドを通じて、横方向に走行する磁気記録面に記録します。この記録を再生する際、走行方向に対して磁気ヘッドのアジマスが90度であることが理想的です。もし記録時にこの角度がずれてしまうと、記録する元の信号の波長よりも、記録面に記録される磁区によるギャップ長が長くなり、高周波成分を記録することができず、結果として信号品質が劣化します。また、異なる機器でメディアを再生したり、複数のヘッド方式を採用する場合、記録時と再生時のアジマスがずれてしまうと、トラック間で位相のずれが生じ、高周波成分を正常に読み出すことができず、再生信号の高域特性が低下します。

アジマス記録方式

このアジマスによる特性の変化を逆手に取ったのが、アジマス記録方式です。多チャンネル用の複数の磁気ヘッドを持つレコーダーでは、再生時に磁気面に記録されたトラックを、隣接するトラック用の磁気ヘッドが拾ってしまうクロストークを避けるために、トラック間にガードバンドと呼ばれる間隔を設けていました。しかし、これは磁気面に記録に使われない部分が残り、効率的な利用ができないという問題点がありました。そこで、記録時にアジマスの異なる二つのヘッドを使って磁気面に記録することで、隣のトラックの信号はヘッドの角度ずれが大きいためにアジマスエラーとなり、信号が減衰しクロストークとして目立たなくなります。これにより、ガードバンドを狭くしたり、無くしたりしても、それぞれの磁気ヘッドが拾う信号の劣化を抑えることができます。

ベータマックス方式では、このアジマス記録方式を採用し、ガードバンドを無くすことで記録面の有効利用を図り、従来までの家庭用ビデオ方式に比べて飛躍的な高密度記録と小型化を実現しました。これにより、ビデオ録画機器の普及と発展に大きく貢献しました。一方、VHS方式では、映像用ヘッドとは別に、HiFi音声用に独立したヘッドを用意し、アジマスを映像トラックと角度をずらして同じ磁気面に記録する「深層記録」方式を採用しています。

固定ヘッドの調整

ヘッドが二つ（記録再生共用と消去用）で、他のメディアを使用しない場合、記録と再生は同じヘッドで行われるため、一般的には厳密な調整は不要です。しかし、他のメディアを使用する場合は、まず録音されたテスト用のメディアを再生し、音域の変化を観察しながらヘッド位置を調整します。ステレオや複数のチャンネルトラックなど、信号が2トラック以上に記録される場合は、2トラックに同じ信号が記録されたテスト用メディアを用意し、オシロスコープで位相角が零度になるように、再生ヘッドの角度を微調整します。

さらに、3ヘッド式（記録用、再生用、消去用）の場合は、最初にテスト用メディアで再生ヘッドの調整を行い、その後、録音ヘッドで2トラックに同じ信号を録音し、再生ヘッドからのモニター信号をオシロスコープで位相角が零度になるように録音ヘッドの角度を微調整します。

関連項目

* Azimuth recording (英語)

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