アズラク派

アズラク派とは

アズラク派（アラビア語: الأزارقة, al-azāriqa）は、7世紀後半にイスラム世界を揺るがしたハーリジー派から派生した過激な分派です。ナーフィウ・イブン・アズラク・ハナフィーを指導者として、ウマイヤ朝カリフ体制に対する徹底的な武装闘争を繰り広げました。

教義の特徴

アズラク派は、他のハーリジー派と同様に、大罪を犯したムスリムは不信仰者（カーフィル）であるとみなし、永遠に地獄で苦しむと主張しました。彼らの教義は、以下のような点で際立っていました。

武装闘争の義務化: アズラク派は、武装闘争を信徒の義務と位置づけ、積極的に参加しない者も不信仰者とみなしました。
敵対者への厳格な態度: 敵対者、たとえ女性や子供であっても殺害を容認しました。しかし、キリスト教徒やユダヤ教徒は、預言者の教えに背いていないとして殺害対象とはしませんでした。
信仰告白（タキーヤ）の否定: 信仰を隠すことを認めず、公然と信仰を表明することを求めました。
イマームの重視: イマームは、武器を手に不信仰者と戦うことを人々に呼びかける存在であると考えました。
* 既存の権威の否定: アリー・イブン・アビー・ターリブやウスマーン・イブン・アッファーン、およびその支持者を不信仰者とみなし、彼らの支配地域を「戦争の家」とみなしました。

歴史

アズラク派の起源は、657年のスィッフィーンの戦いにまで遡ります。この戦いで、カリフ・アリーとシリア総督ムアーウィヤの仲裁合意に反対した人々がハーリジー派を形成しました。その後、アリーが暗殺され、ムアーウィヤがカリフを称すると、ハーリジー派は弾圧を受けました。しかし、680年にムアーウィヤが亡くなり、第二内乱期に入ると、ハーリジー派は再び反体制運動を展開しました。

イラクのバスラを拠点としたハーリジー派の中から、ナーフィウ・イブン・アズラクが登場し、ウマイヤ朝の総督を追放してバスラを一時的に支配しました。しかし、住民はイブン・ズバイルをカリフとして支持したため、アズラク派はアフワーズへと逃れました。

その後、イブン・アズラクはバスラ近郊を襲撃し、非ハーリジー派のムスリムを無差別に殺戮しました。685年にイブン・アズラクは戦死しましたが、アズラク派は組織を再編し、イブン・ズバイルの軍勢と戦い続けました。686年には、ムハッラブ・イブン・アビー・スフラによって壊滅的な打撃を受けましたが、ファールス地方に撤退し、勢力を回復しました。

カタリー・イブン・フジャーアを新たな首領として、アズラク派は再びバスラに現れ、ファールスやキルマーンを長期にわたって支配しました。カタリーは自らの名前で金貨を鋳造し、「信徒の長」を意味する「アミール・ル・ムウミニーン」の称号を使用しました。

694年にハッジャージュ・イブン・ユースフがイラク総督に任命されると、ムハッラブを復帰させてアズラク派の掃討を命じました。ムハッラブは幾度かの戦闘でアズラク派をキルマーンまで追い詰め、698年から699年頃にアズラク派は壊滅しました。

影響

アズラク派は、その過激な思想と行動によって、イスラム世界に大きな影響を与えました。彼らの教義は、後のイスラム過激派の思想に影響を与えたとも言われています。

彼らの存在は、イスラム教の歴史における政治と宗教の複雑な関係を示す一例として、今日でも研究の対象となっています。

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