アゼルバイジャン空軍

アゼルバイジャン空軍

アゼルバイジャン共和国軍を構成する主要な組織の一つとして、空軍および防空軍を担うアゼルバイジャン空軍（英語: Azerbaijani Air and Air Defence Force、アゼルバイジャン語: Azərbaycan hərbi hava qüvvələri）が存在します。この部隊は、アゼルバイジャンの空域の安全保障と、陸上部隊への航空支援を主要な任務としています。その成り立ちは、ソビエト連邦の解体に伴い、アゼルバイジャン領内に駐留していた旧ソ連空軍の部隊と機材を引き継いだ歴史的経緯から、現在もその構造や運用装備には旧ソ連製の影響が強く見られます。

概要

2008年時点のデータによると、アゼルバイジャン空軍は約8,000名の人員を有し、およそ130機の固定翼航空機、約120機のヘリコプター、そして20機の無人偵察機を運用しています。これらの部隊や機材は、国内の16ヶ所の恒久基地と、必要に応じて使用可能な50ヶ所の臨時空港を拠点としています。過去には、隣国アルメニアとの間での紛争において、地上目標への攻撃、物資や人員の空輸、空中戦といった多様な任務に実戦投入された経験を持っています。

アゼルバイジャン空軍は、航空機の運用を行う航空隊に加え、地対空ミサイルシステムを装備した防空部隊も管轄下に置いており、航空攻撃と地上からの防空を統合的に運用しています。

組織構造

アゼルバイジャン空軍は、主に航空機を運用する「航空隊」と、地上配備型防空システムを運用する「防空部隊」によって構成されています。

航空隊

航空隊は、複数の連隊や飛行隊で構成され、戦闘攻撃、偵察、訓練、輸送といった多様な航空任務を担います。主な部隊には、カラの第843混成航空連隊、キュルダミルの第416戦闘爆撃機航空飛行隊、ゼイナラブディン・ナソスヌイの第408戦闘機航空飛行隊や輸送航空飛行隊、ダルリャルの第422偵察航空飛行隊、サンガチャルィの第115教育航空飛行隊などがあります。

防空部隊

防空部隊は、敵の航空機やミサイルを迎撃するための地上防空システムを運用します。組織は、4個の高射ミサイル旅団、高射ミサイル連隊、2個の独立電波技術大隊で構成されています。

防空能力の強化策として、2005年にアメリカの支援を受け、アスタルとフィジン地区に電波電子センターが設置されました。これらのセンターは、レーダーと通信傍受能力を組み合わせ、周辺国の警戒やミサイル発射の探知、無線傍受を行います。EADS社製TRML-3Dレーダーは200kmから300kmの探知距離を持ちます。また、2015年までの計画で、これらを含むネットワーク「カフカースネット」の構築が進められていました。

主要装備

アゼルバイジャン空軍の装備には、多様な航空機と地対空ミサイルシステムが含まれます。

航空機としては、戦闘機、輸送機、練習機、ヘリコプター、無人航空機などが任務に応じて配備されています。

防空部隊の主要な地対空ミサイルシステムには、長距離防空システムのS-300PMU2型やS-200、中短距離システムとしてS-125-2TM型（推定24基）、S-75、9K37M/MB ブーク型、そしてバラク-LRAD/MRAD型などがあり、これらを組み合わせることで、様々な脅威に対応します。具体的な運用数は不明なものが多いです。

アゼルバイジャン空軍は、航空能力と防空能力を統合的に運用することで、アゼルバイジャンの安全保障に重要な役割を果たしています。

参考文献: The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2024) The Military Balance 2024.

もう一度検索