アッコロカムイ

アッコロカムイの伝説

アッコロカムイ（アイヌ語で「触手を持つカムイ」）は、北海道・噴火湾に伝わる伝説の生物です。漢字では「大章魚」と表記されることもありますが、その姿はただのタコに留まらない、神秘的で恐ろしい存在としてアイヌの民話に根付いています。

アッコロカムイの姿と生息地

アッコロカムイは、噴火湾を支配する巨大なタコとされています。その大きさは脚を広げると約1ヘクタールに達し、観光船やクジラなども飲み込んでしまうと伝えられています。また、体全体が赤い色をしており、その姿が水面に映ると、辺りの海や空が赤く染まるとされています。この妖怪に遭遇することは非常に危険であり、海が赤く染まっているのを見かけた村人たちは、一歩も近づかないようにしていました。さらに、漁に出る際には大鎌を携え、身を守るための手段を講じていました。

民話の背景

アッコロカムイには、古いレブンゲの地で起こった妖怪の出現に関する民話があります。そこでは、巨大なクモの怪物「ヤウシケプ」が現れて町を荒らし回り、多くの人々が恐怖に陥りました。この騒ぎは神々の耳にも届き、海の神であるレプンカムイが人々を救うため、ヤウシケプを海に引き入れることとなったのです。その結果、ヤウシケプはタコの姿に変わり、アッコロカムイとして噴火湾を支配する存在になったと伝えられています。

謎めいた存在

興味深いことに、民俗学研究所の『日本妖怪変化語彙』においてはアッコロカムイについて記述されているものの、タコとの明確な関連が曖昧なために、書籍によっては巨大な魚と解釈されることがあります。このように、アッコロカムイの存在は解釈される場面によって変わるため、民話の神秘性をより強調しています。

類似の物語

アイヌの伝説にはアッコロカムイ以外にも噴火湾の化け物に関する話が存在します。「アツゥイカクラ」や「アヅイカクラ」という巨大ナマコの伝説では、女の着物が化けたものとされ、流木に口をつけて浮かぶことで漁船をひっくり返すといいます。また「レブンエカシ」という名の化け物は、8頭のクジラを飲み込む力を持つとされ、2人の漁師が腹のなかで火を焚くことで助かったというエピソードも語られています。更に、室蘭近海には「アツゥイコロエカシ」が存在し、船をつかまえる巨大な赤い化け物とも言われています。

このように、アイヌの伝説には海や空を舞台にした多くの神秘的な存在があり、アッコロカムイはその中でも特にの象徴的な存在です。

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