アディティヤ・ダール

アディティヤ・ダール（Aditya Dhar）は、1983年3月12日に生まれたインドの映画監督、そして脚本家です。

経歴

芸術に造詣が深く、デリー大学で芸術音楽学部の学部長を務めていた母の影響を受け、幼少期から文化的な環境で育ちました。やがて映画の世界に強い関心を抱くようになります。青年期には演劇活動に深く関わり、この経験を通して、監督という立場の重要性や、作品のあらゆる側面に影響を与えるその役割の多面性について理解を深めました。

初期キャリア

ボリウッド映画界でのキャリアをスタートさせた彼は、まず作詞家や脚本家として活動しました。初期に参加した作品には、『カブール・エクスプレス』、『Haal-e-Dil』、『One Two Three』、『Daddy Cool』などがあり、『Aakrosh』や『テーズ:スピード』といった作品では台詞脚本を手がけています。

監督への道と困難

監督としての第一歩として、ファワード・カーンとカトリーナ・カイフを主演に据えた映画『Raat Baaki』の準備を進めていました。しかし、製作中に2016年ウリ襲撃事件が発生。これを受けてインド映画製作者協会がパキスタン人俳優の起用を禁止する決定を下したため、主演の一人であったファワード・カーンがパキスタン人であったことから、『Raat Baaki』の製作は中止を余儀なくされました。

この企画が頓挫した直後、インド陸軍がウリ襲撃事件への報復として行った攻撃作戦の存在を知ります。この出来事に強い関心を抱いた彼は、一連の経緯を題材とした映画を製作する構想を練り始めました。構想を実現するため、友人のジャーナリストや陸軍の退役将校など多方面への取材を重ね、詳細な資料収集を行いました。

『URI/サージカル・ストライク』の成功

こうして綿密な準備を経て完成したのが、2019年に公開された『URI/サージカル・ストライク』です。本作はアディティヤ・ダールの記念すべき監督デビュー作となりました。公開されると、観客や評論家から高い評価を受け、興行収入は34億ルピーを超える大ヒットを記録しました。この成功により、アディティヤ・ダールは監督として一躍その名を広く知られる存在となりました。同作での手腕が認められ、国家映画賞の監督賞、フィルムフェア賞の新人監督賞、スター・スクリーン・アワードの有望監督賞、ジー・シネ・アワードの有望監督賞など、数々の重要な賞を受賞しています。

その後も、2024年には『Article 370』の製作と脚本を手がけるなど、精力的に活動を続けています。

フィルモグラフィー

彼が携わった主な作品とその役割は以下の通りです。

『カブール・エクスプレス』（2008年）- 作詞
『Haal-e-Dil』（2008年）- 作詞
『One Two Three』（2008年）- 作詞
『Daddy Cool』（2009年）
『Aakrosh』（2010年）- 台詞脚本
『テーズ:スピード』（2012年）- 台詞脚本
『URI/サージカル・ストライク』（2019年）- 監督、脚本
『Article 370』（2024年）- 製作、脚本

受賞歴

受賞した主な賞は以下の通りです。

国家映画賞 監督賞：『URI/サージカル・ストライク』（2019年）
スター・スクリーン・アワード 有望監督賞：『URI/サージカル・ストライク』（2019年）
フィルムフェア賞 新人監督賞：『URI/サージカル・ストライク』（2020年）
ジー・シネ・アワード 有望監督賞：『URI/サージカル・ストライク』（2020年）
* ジー・シネ・アワード 台詞賞：『Article 370』（2025年）

アディティヤ・ダールは、困難を乗り越え、その才能を開花させたインド映画界の注目すべき監督の一人です。

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