アディポネクチン

アディポネクチンの概要

アディポネクチン（Adiponectin）は脂肪細胞から放出される重要な分泌タンパク質で、他にもGBP-28、apM1、AdipoQ、Acrp30といった異名を持ちます。この物質は、身体においてさまざまな生理的役割を果たしており、特に糖代謝や脂肪燃焼に深く関与しています。

特性と作用

アディポネクチンの血中濃度は、一般的なホルモンと比較して非常に高い水準に達し、μg/mlオーダーにも及びます。このタンパク質は、さまざまな作用を持ち、主なものには以下が含まれます：

• - インスリン受容体を介さない血糖取り込みの促進
• - 脂肪酸の燃焼促進
• - 細胞内脂肪酸の減少によるインスリン受容体の感受性向上
• - 肝臓のAMPキナーゼの活性化によるインスリン感受性の向上
• - 動脈硬化の抑制
• - 抗炎症効果
• - 心筋肥大の抑制

アディポネクチンは、AdipoR1、AdipoR2、T-Cadherinといった受容体に結合することが知られており、これを通じてその効果を発揮します。特に、AdipoR1とAdipoR2は重要な受容体として機能し、アディポネクチンの生理学的役割に寄与しています。

特徴と相関

血中のアディポネクチン濃度は内臓脂肪量に逆相関の関係にあるとされており、体脂肪が増えると濃度が低下する傾向があります。このメカニズムには未解明の部分が多く、肥満によるTNF-αの増加が一因と考えられています。一部の研究では、低炭水化物ダイエットがアディポネクチン濃度を増加させる可能性が示唆されています。

骨格筋における作用

骨格筋においてもアディポネクチンは重要な働きを持ちます。アディポネクチンは受容体に結合することでAMPキナーゼを活性化し、この経路を通じてインスリン感受性のグルコーストランスポーターであるGLUT4を細胞膜の表面に移動させます。これにより、通常はインスリンの作用を介さない形でグルコースの取り込みが促進されます。運動によって生成されるアデノシン一リン酸（AMP）も、このAMPキナーゼの活性化に寄与します。

研究の混乱

AdipoR1とAdipoR2の同定に関する研究では、2016年に研究不正の告発がありました。しかし、この件については関連する学術誌が修正公告を出したため、調査対象から外れました。アディポネクチンの受容体に関する混乱は、2019年出版の「Journal of Lipid Research」にて解説されており、責任著者である門脇孝はその自伝の中で、受容体の同定に関与した部下について述べています。

関連項目

アディポネクチンに関連するトピックスには、メタボリックシンドローム、アディポサイトカイン、またアディポロンを発見した岩部美紀の研究があります。これらの研究は、アディポネクチンやその受容体を通じた治療法の開発に寄与する可能性があると考えられています。

外部リンク

• - 「動脈硬化の鍵・アディポネクチン」知っ得納得
• - 「心臓病は防げる!」ためしてガッテン（NHK）
• - 「アディポネクチンと糖尿病・心血管病の分子メカニズム」門脇孝、山内敏正、窪田直人

アディポネクチンは、今後の健康研究や治療法の発展において重要な役割を果たす蛋白質として、さらなる調査が求められています。

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