アデノシン受容体

アデノシン受容体 (Adenosine receptor)

アデノシン受容体は、細胞膜上に存在する重要なタンパク質の一つであり、細胞外に存在するシグナル分子であるアデノシンを認識し、これに結合することで細胞内へ信号を伝達する役割を担います。アデノシンとの結合は、細胞の様々な生理的反応を引き起こす起点となります。

この受容体分子は、その機能機構の分類において、Gタンパク質共役型受容体（GPCR, G protein-coupled receptor）ファミリーに属しています。GPCRは、7つの膜貫通ヘリックス構造を持つ共通の基本構造を有しており、細胞外からの刺激を受け取ると、細胞内にあるGタンパク質と呼ばれる別のタンパク質と相互作用してこれを活性化します。活性化されたGタンパク質は、さらに細胞内のセカンドメッセンジャー経路などを調節し、最終的な細胞応答へと繋がります。アデノシン受容体によるアデノシンのシグナル伝達も、このGタンパク質を介した経路を通じて行われます。

アデノシン受容体は、より広範な受容体群であるプリン受容体ファミリーの一員として位置づけられています。プリン受容体は、アデノシンやアデノシン三リン酸（ATP）といったプリン構造を持つ分子をリガンド（結合相手）とする受容体の総称です。プリン受容体は、リガンドの種類に応じてP1受容体とP2受容体に大別されますが、アデノシン受容体はアデノシンを主要なリガンドとするため、P1受容体サブタイプに分類されます。このため、アデノシン受容体はP1受容体と呼ばれることもあります。

ヒトの生体においては、アデノシン受容体には構造や機能、組織分布などが異なる複数のタイプ、すなわちサブタイプが存在することが知られています。現在までに、主要なサブタイプとして以下の4種類が同定されています。

アデノシンA1受容体
アデノシンA2A受容体
アデノシンA2B受容体
アデノシンA3受容体

これらの4種類のサブタイプ、アデノシンA1受容体、アデノシンA2A受容体、アデノシンA2B受容体、そしてアデノシンA3受容体は、それぞれが異なる遺伝子によってコードされており、アデノシンに対する親和性や、結合後に活性化するGタンパク質のタイプ（例えば、Gi/o型やGs型など）、そして細胞や組織における発現パターンが異なります。このサブタイプの多様性が、アデノシンが生体内で果たす多岐にわたる生理的役割の基盤の一つとなっています。

総括すると、アデノシン受容体は、アデノシンをリガンドとするGタンパク質共役型受容体であり、プリン受容体ファミリーのP1受容体サブタイプに位置づけられます。ヒトではA1, A2A, A2B, A3の4つのサブタイプが確認されており、それぞれが固有の性質を持ちながら、アデノシンを介した細胞間コミュニケーションにおいて重要な役割を果たしています。

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