アドミラルティ・アーチ

アドミラルティ・アーチ：ロンドンの歴史と変貌

ロンドンの象徴的な建造物の一つ、アドミラルティ・アーチは、トラファルガー広場とザ・マルを繋ぐ威容を誇ります。この壮麗なアーチは、単なる建造物としてだけでなく、英国の歴史と変遷を物語る重要なランドマークでもあります。

建造と歴史

1912年に完成したアドミラルティ・アーチは、建築家アストン・ウェッブのデザイン、ジョン・モーレム社による建設によって実現しました。その名称は、隣接する海軍本部（アドミラルティ）に由来しています。建造の発端は、エドワード7世が母であるヴィクトリア女王の記念として建造を命じたことに遡ります。しかしながら、エドワード7世は完成を見ることなく生涯を終えました。アーチの頂部には、この歴史を刻むラテン語の銘文が刻まれています。

2000年には、英国政府の内閣府がホワイトホールを本拠地としながらも、一部のオフィスをこのアーチに移転しました。内閣府戦略室や社会的排除対策室もここに置かれましたが、2011年には政府の財政緊縮政策に伴い、アーチは空室となりました。その後、売却されることとなり、2012年10月にはプライム・インベスターズ・キャピタルが落札者となりました。

高級ホテルへの変貌

落札者であるラフェエル・セラーノは、アドミラルティ・アーチを高級ホテルに改築する計画を立てていました。125年の賃貸権付きで売却されたこの建物は、2013年8月、ウェストミンスター市議会から修復と改築の許可を得て、高級ホテル「ウォルドーフ・アストリア」として生まれ変わりました。100室以上の客室に加え、宿泊客と会員向けのプライベートクラブも併設されています。

式典における役割

アドミラルティ・アーチは、ロンドンの重要な式典において重要な役割を果たしてきました。トラファルガー広場からザ・マルへのセレモニーの入り口、あるいはバッキンガム宮殿へのパレードルートとして、ロイヤルウェディング、国葬、戴冠式など数々の歴史的イベントの舞台となっています。2012年のオリンピック・パラリンピック閉会式では、多くの参加者がこのアーチをくぐりました。

隠された「鼻」

アーチの北端内壁には、人間の鼻にそっくりな彫刻があります。これはアーティスト、リック・バークレイが1997年に「ビッグ・ブラザー」的社会への反対運動として設置したものです。約2.1メートルもの高さに位置し、馬に乗った人がアーチをくぐる際、腰のあたりにくる高さです。この彫刻の由来は当初、都市伝説として語られていましたが、ロンドン・イーブニング・スタンダード紙によってバークレイの作品であることが明らかになりました。この作品は、特大の鼻で知られた初代ウェリントン公爵へのオマージュだと伝えられています。

アドミラルティ・アーチは、単なる建造物としてだけでなく、歴史、政治、芸術が複雑に絡み合ったロンドンの象徴的存在として、これからも人々を魅了し続けるでしょう。その歴史と変遷、そして隠された「鼻」の彫刻など、様々な魅力が詰まったこの建造物は、訪れる者に忘れられない思い出を刻み込むことでしょう。

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