アドリアン・デュブーシェ国立博物館

アドリアン・デュブーシェ国立博物館：リモージュ磁器の宝庫

フランス中西部、リムーザン地方のリモージュ市に位置するアドリアン・デュブーシェ国立博物館は、世界有数の磁器コレクションを擁する博物館です。11,000点にも及ぶ磁器のうち、4,000点以上が一般公開されており、リモージュ磁器の歴史と技術の粋を堪能できます。

歴史：美術館から国立博物館へ

この博物館の歴史は、1845年に設立された「オート＝ヴィエンヌ県立美術館」に遡ります。当初は絵画、彫刻、工芸品などを展示する総合美術館でしたが、1852年、リモージュの重要な産業である磁器製造業に着目し、陶磁器部門が新設されました。

転機となったのは、1865年のアドリアン・デュブーシェの館長就任です。デュブーシェは翌年、自身の貴重な磁器コレクション400点を寄贈。さらに、美術史家アルベール・ジャックマールの死後、そのコレクション587点を買い取り、これも美術館に寄贈しました。この貢献により、美術館は彼の名を冠する「アドリアン・デュブーシェ国立博物館」と改称されました。

1868年には装飾美術学校が併設され、人材育成にも貢献。しかし、コレクションの急増に伴い、1881年にデュブーシェが死去すると、博物館と美術学校はフランス国に移管されました。1896年から改築工事が行われ、1900年に現在の建物が完成しました。2011年には美術学校が移転し、その跡地を利用して展示スペースが拡張、2012年にリニューアルオープンしました。なお、元の美術館が所蔵していた絵画や彫刻は、リモージュ市立博物館に移管されています。

建築：アール・ヌーヴォー様式の美しい建物

1900年に建設された博物館の建物は、折衷様式を基調とした美しい外観が特徴です。1階にはアーケードが巡り、2階はズグラッフィートで装飾。内部の床や天井には、アール・ヌーヴォーの影響を受けたモザイクが施されています。1階と2階をつなぐ踊り場にあるステンドグラスは、マルセル・デロンの作品です。建物は旧美術学校と共に「歴史的記念建造物」に登録されています。

日本との関わり

1998年の「日本におけるフランス年」では、本博物館から200点以上の作品が、東京、北九州、神戸で展示されました。この企画は、多くの日本人にリモージュ磁器の魅力を伝える上で大きな役割を果たしました。

アドリアン・デュブーシェ：実業家、美術評論家、そしてコレクター

アドリアン・デュブーシェ（1818-1881）は、リモージュ出身の実業家であり、美術評論家としても高い評価を得ていました。毛織物店を経営する傍ら、陶芸に熱中し、パリのサロンで文化人との交流も深めました。館長として博物館に多大な貢献をしただけでなく、1878年のパリ万国博覧会では審査委員を務め、「陶芸の分野でもっとも精通した人物」と称賛されました。

まとめ

アドリアン・デュブーシェ国立博物館は、リモージュ磁器の歴史と文化を深く理解するための貴重な場所です。美しい建築と充実したコレクションは、訪れる人々を魅了し続けています。 リモージュを訪れる際には、ぜひ足を運んでみてください。

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